お山の妄想のお話です。





パートナーは俺が不便をしないように、色々

と整えていた。


『テレビ、エアコン、照明なんかはア○クサ

に言えばいいし、喉が渇いたらこれを飲んで

いてね』


頭の近くにストロー付の水筒が置かれ、これ

で準備は万端と満足そうだ。

おいらは水筒からプイと顔を背け、『飲まねえ』と宣言した。


誰だって変態プレイに直結することは避ける

だろ、おいらだってそれに習ったんだ。

しかしパートナーは眉を寄せ言う。


『駄目だよ飲まなきゃ、熱中症になるよ』


なんねえ、今何月だと思ってんだよ


『季節なんて関係ないでしょ?人間は体重の

60%が水分なんだから補給をしなきゃ駄目だ

よ』


もっともらしいことを言うけど、お前の目的

はお仕置とかいう変態プレイだろ


『そんなことない、俺は大事なあなたを心配

してるの。本当に飲まないつもり?』


飲まね


『じゃあしょうがないね。今、強制的に飲ん

でもらうから』


徐に水筒を掴むとストローから液体を吸い込み、おいらの口を無理やり開けると口移しで

それを注ぎ込む。


んむっ!!


必死で飲み込まないようにしたさ、でも業を

煮やしたパートナーに鼻を摘ままれ呼吸が出

来なくなって結局嚥下させられた。


それを何回か繰り返した後、ぐったりとした

おいらを『これで一安心』と満足そうに見て

いる。


一安心じゃねえよ、鬼畜か


『鬼畜?心外だな。俺はあなたのためを思っ

てしたのに』


おいらのためと言うなら、今すぐ手錠を外し

て自由にしろ!お仕置はナシだ!


『それは無理、躾なんだから』


何を言っても聞き入れやしない。

これは強硬な態度を取り続けるより、情に訴

えた方がいいのかもしれない…

おいらは普段から潤んでいる(と言われる)瞳

をさらにウルウルさせてパートナーを仰ぎ見

た。


おいらが悪かった、謝るから…


外して?と一寸首を傾げたりしてみる。


『  駄目、しおらしい態度で俺を騙すつもりで

しょ?それには引っ掛からないよ』


長い付き合いだからおいらの演技などお見通

しらしい、作戦は失敗だ。

恨めしく睨んでいると、パートナーのスマホ

が鳴った。


『ああ、車が着いたみたい。俺は仕事に行く

からあなたはイイコにしていてね』


おいっ!マジか?マジでおいらこのまま?!


『そうだよ、イイコにしてたら御褒美あげる

からね』


御褒美なんていらないからっ!

手錠を外せ~っ


『暴れたら駄目、怪我するよ?』


どんなに暴れても重厚な革のソファーはびく

ともしない、逆においらの方が擦れて痛いや


『ほら、足首が赤くなっちゃった。もう諦め

て静かにしていて』


パートナーは赤くなったおいらの足首を優し

く撫でてから、荷物を持って部屋を出て行っ

てしまった。


……マジか……嘘だろ……


後何時間もこのままなのかと悲嘆していると

ガチャリと部屋のドアが開き、ひょこっとパ

ートナーが顔を出した。


考え直してくれたと思い歓喜の表情で迎えると、奴はニヤリとしながら手に持った物をお

いらに見せたんだ。


『忘れてた、寒くなったらこれを掛けてね』


  へっ?


再び現れたパートナーは大きめのブランケッ

トをソファーの背凭れに掛けると『今度こそ

行ってきます』と営業用の爽やかな笑顔を残

して部屋を出て行った。


おいらの期待は外れたんだ。





一人になって数時間は寝ていた。

動けないからやることもないしテレビだって

普段から観ないからそうするしかなかった。


尿意も感じず『意外といけるかも』なんて楽

観的に考えていたのも束の間、七時間も過ぎ

た頃には段々と排泄したくなってきた。



〖膀胱容量には個人差がありますが、正常で

あれば300~500mlくらい尿をためることがで

きます。

尿は腎臓から常に流れてきており膀胱が尿を

貯める時には脳から脊髄を介して尿を貯める

ように神経が働きます。

膀胱に100~150mlの尿が溜まると、膀胱が

引き伸ばされた刺激で尿意を感じます(初発

尿意)ここでトイレへ行かず我慢すると300~

500mlくらいの尿が溜まり限界になります(最

大尿意)〗


ア○クサに訊いたら、そう答えられた…

そう、今は正に最大尿意だ。


それでもおいらは耐えている、だってイイ歳

のオッサンがお漏らしなんて最悪だろ。

それにこの本革ソファーの値段を知ってるか

ら、汚したりなんかできねえよ。


我慢出来なくてチビった時の為に、繋がれて

いない片足で悪戦苦闘しながら背凭れに掛け

てあったブランケットを腰の下に敷いた。

一寸だけ安心したけど、この布で全部を吸収

するのは無理だろう。


時よ早く過ぎろ…、時計を見ては祈り

さっさと帰ってこい変態め、パートナーを思

い浮かべては怨み節を吐いた。


引いては戻る尿意を何回も我慢してやり過ご

したけど、もう腹筋も膀胱も限界だ。

呼吸は乱れ、冷や汗が身体を湿らせる。


はあ、はあ、はあ…

苦しい、辛いよ

……もう、駄目


助けて、助けてよ

………し…くん……


切羽詰まったおいらが助けを求めたのは、悔

しいことにパートナーだった。


譫言のように何度も繰り返して名を呼んでい

ると、遠くからドタバタと騒がしい物音が聞

こえてきた。

それはどんどん近付いて、とうとうリビング

まで到達し凄い勢いでドアが開いた。


「さとし君!」


満面の笑みのパートナーが飛び込んでくる。

殆ど虫の息だったおいらは動くこともできず

に弱々しい目線を向けた。


「遅くなってごめんね、辛かったでしょ」


良く我慢できた、良いこだったねと賛し、ね

ぎらうけれど奴の表情はにデレデレと嬉しそ

うだ。

俺をこんなに酷い目に合わせたくせに、鼻の

下を伸ばしているなんてどういう事だよ!


そう怒鳴りたいけど腹に力が入るのは避けな

ければならない、だって拍子に出そうだもの

おいらは一旦怒りを飲み込み、早く束縛を解

いてと頼んだ。


パートナーはずっと手に持っていたスマホを

テーブルに置くと『そうだね、急ごう』と片

足の手錠だけ外し、おいらを抱き上げると何

故かバスルームへと走った。


な、なんで?トイレじゃないの?!


「うん、勢いが凄くてもお風呂なら大丈夫だ

し、汚れても直ぐに洗えるでしょ」


トイレで自分でするから手錠を外して!


「自分で?駄目だよ、だってお仕置だし」


お仕置って!ずっと我慢したじゃん!


「お仕置は『放尿プレイ』って言ったよね、

だから俺の目の前でしなくちゃ」


お前、マジか!


「マジだよ。さあ観念して」


嫌だ!やだやだっ!


「もうっ、じゃあ強制的にね」


奴はおいらを風呂場に下ろすと、後ろから両

手でギュッと腹を圧迫した。


うわっ!ああ、ぁ…


その途端、極限まで我慢していたものが勢い

良く噴き出した。


嫌なのに、恥ずかしいのに止められない。

むしろ凄く開放的で気持ちがイイ…


パートナーの視線を感じながら、おいらは恍

惚とした顔で用を足し続けた。 





その後、そのまま風呂に入り上機嫌なパート

ナーに身体の隅々まで洗われた。


「お風呂から出たらご飯にしようね」


おいらメシの仕度なんてできないぞ、疲労困

憊なんだから


「うん、わかってる。高級なお寿司を買って

来たからそれを食べよう。イイコにしてた御

褒美だよ」


……寿司か、ウニとか大トロとかある?


「あるよ、あなたの好きなものを握ってもら

ったからね」


大盤振る舞いだな、罪滅しのつもり?


「違うよ、大人しくお仕置を受けていたあな

たへの御褒美なんだから」


確かに大人しくしていたけど……

それを知っているかのような、パートナーの

口ぶりに違和を感じた。


『イイコにしていた御褒美』

『大人しくお仕置を受けていたあなた』


まるでずっと様子を見ていたみたいじゃない

か?


おいらの様子がわかったのかよ


「ん?わかってたよ。ずっと見ていたから」


ずっと見てた?!どこで??


「テーブルの上に小さいカメラがあったのに

気が付かなかった?あれね、ペット見守りカ

メラって言って離れた場所にいてもスマホで

ペットの様子がわかるんた。音声も聞こえる

んだよ」


う、うそっ!


「嘘じゃないよ、俺を呼ぶ切羽詰まった声も

バッチリ聞こえたし、あなたの苦しそうな顔

や凄い格好でブランケットを移動させる様子

も楽しく拝見しましたからね」


……そう言えば、ソファーの前のテーブルに見

慣れない物体があった。

あれか!あれが!あれで!?見てた!!


「あなたが心配だったんだもの、怒らないで

ね。でもあのカメラ予想以上に良い働きだっ

たよ、だってあなたの我慢してる顔が最高に

良かったもの」


全部見られていたなんて……

恥ずかしくて『穴があったら入りたい』の心

境だった。





美味しいお寿司を食べた後、優しく大切にパ

ートナーに抱かれた。


今日のアレは『放尿プレイ』の中の『ペット

調教プレイになるんだと。

それをした後はしっかりいいつけを守ったこ

とを褒めて、優しく抱いてあげるのが御褒美

なんだそうだ。

…………犬の躾と同じなんだって



しかしパートナーくんよ、おいらは猫だった

はずだ。

犬は躾られるけど、猫は自由奔放だから躾は

難しいんだぜ。


それに猫の怨みは深いの知っているか?

『化け猫』とか『猫又』とか、怨みから化け

物になるんだよ。

『お仕置』なんて言う理不尽な仕打ちを受け

たおいらの怨みも深いからな。



いつか、いや、近い内にパートナーにもお仕

置をしなくちゃ。

だっておいらに内緒で擬装結婚なんてしちゃ

ってさ、ただで済むと思ってるのか?


目には目を歯には歯を


お仕置をもって躾をしてやるからな。


パートナーは犬っぽいから首輪をして、犬調

教プレイにしよう。

絶対に外れない首輪と、届きそうで届かない

長さの鎖とか……


ふふ、んふふ……


色々想像し楽しくて溢れた笑い声は隣からの

大きな鼾に掻き消された。


テレビでこんな鼾をかく犬を見たことある、

やっぱりこいつは犬だ。



待ってろよ、お前を『御褒美を貰えないわん

こ』の心境にしてやるからな






m(_ _)m



四方八方ごめんなさい

Yu²さんエロくならんかった

只の変態になってもうた


続きません。