お山の妄想のお話しです。
初めて翔くんの家に来た。
家の人達は昨日の土曜日から温泉へ1泊旅行
に行き留守らしい。
通された翔くんの部屋は多分掃除をしたのだ
ろうけど物で溢れかえっていた。
ベットの下とかにエロ本とか隠してるのかな
ぁなんて思いながら興味津々に見回して、そ
して見付けてしまったんだ。
部屋の隅に無造作に置かれた数個の紙袋を。
中からカラフルな包みが顔を覗かせている、
きっと近付けば甘い薫りがするはずだ。
休み前の金曜日に貰ったんだな
イケメンのモテ男め……
おいらを好きだと言いながらも受けとるのかよ。
ちょっとイラついて、意識してそれを見ない
ようにしていた。
そしたら翔くんがチョコをくれとか言い出し
て、おいらに迫ってくるんだよ。
翔くんはおいらがチョコを渡すのを当然みた
いに言ってるけど、おいら男だぜ?
チョコなんて用意するはずねえじゃん。
それに、おいらがやらんでも可愛い女の子に
貰ったやつが山積みであるし。
そんだけありゃあ充分だろ。
だからおいらは『くれ、くれ』としつこい翔
くんを無視してたんだ。
なのに翔くんはいきなりGパンのケツのポケ
ットに手を突っ込んで、もぞもぞとまさぐり
始めた。
おい、こら、落ち着いて良く考えろや!
熱で溶けてしまうチョコを、Gパンのポケッ
トに入れる奴なんていないだろ!
ましてやケツポケットなんかにゃ絶対に入れ
ねえわ!
「ちょっ、翔くんやめろや~」
「あれ、ないなぁ」
だからさっきから無えって言ってんだろ!
いいようにケツをまさぐりやがって!
擽ってえんだよ!
翔くんの手をどうにかどけて、背中を向けて
やった。
まったく、どうしてこいつはおいらの前と女
子の前とで態度が違うんだ!
女子の前ではキリリとしたイケメン王子様な
のに、おいらの前では助平なオジサンみてえ。
直ぐ触るし、チューもしてくる。
…それは気持ちイイからまあ許すけどさ。
その後いつも目で訴えてくるんだよ、したい
って。せっくすしたいってさ…
翔くんと確実に付き合い出して半年くらい。
男女だったらもう済ませている頃かもしれな
いけど、同性のおいら達には、いや、おいら
にはハードルが高い。
やり方なんて知らんし、され方なんて知りた
くもねえ。
おいら思うんだ、やっぱりお互いの思いがピ
ッタリ合わなければせっくすはするべきじゃ
ないと。
それにおいら達にはまだ解決しなきゃなんね
え問題が残っているしな。
……なんて考えていたら。
事も有ろうに翔くんは、今度は前ポケットを
探り始めたんだ。
『あれ?あれ?どこだ?』とか小さく呟やき
ながらゴソゴソ指を動かす。
なんだよこいつ!超擽ってえ!
首筋にかかる息もこそばゆいし、チョコを探
しているだろう指も肌を妙に撫でらるような
感触でどうにもムズムズする。
しかもだんだんと指がおいらのデリケートな
場所の方まで弄ってきたんだ。
多分わざとじゃないだろうけど、爪先がおい
らのアレにチョイチョイ当たる。
その度に背筋からゾクゾクした感覚が這い上
がってきて、自分の意思とは関係なくアレが
反応してしまう。
ヤバイヤバイ!翔くんに感付かれる前に離れ
なきゃ!
気付かれたら何をされるかわからん、多大に
身の危険を感じる。
ジタバタと暴れてみるけど完全なホールド状
態で身動きがとれねえ。
そのうちとうとう感じてしまったのがバレて
それまで以上にまさぐられた。
触られ弄られ、指先で悪戯をされる。
その度にピクピクしてしまうのが恥ずかしく
て悔しくて、おいらは俯いて耐えるしかなか
った。
変な声が出そうになるのを唸って誤魔化し、
なんとか快感を逃そうとおいらが奮闘してい
ると突然尻にゴリッと硬いものが押し付けら
れた。
これは多分、いや確実に翔くんのアレだ。
グイグイケツに押し付けて硬さをアピール
してくる…
「 したい 」
「うっ!?」
やべえ、やべえだろ。
翔くんのスイッチが入っちまった、なんとか
しなきゃおいらが危ない!
「俺のこれをね、智くんのここに入れたい」
翔くんが尻の割れ目、穴の辺りに硬いやつを
押し込むようにあててくる…
不味い、完全においらが入れられる側になっ
てる!
前にもこんなことがあった!
夕暮れの生徒会室で!
その時は自分勝手に進めるなっておいらが諭
して、そんで、翔くんも弁えた。
結局のところ翔くんは優しいヘタレだから、
おいらの嫌がることは出来ないんだよ。
今回もそれでいけるか?!
でも今日は自室という翔くんのテリトリーの
中だ、きっと気が大きくなっているはず。
てか、大きくなってるのは気だけじゃねえけ
どっ!
それに、もうすぐおいらが卒業だから確かな
繋がりが欲しいなんて尤もらしい理屈をつけ
て言ってくるんだ。
確かに3月で卒業するけど、進路の芸大には
実家から通うから離ればなれになるわけじゃ
ない。
高校とは違う新しい世界に行ったとしても翔
くんを想う気持ちは変わったりしない。
それなのに
身体の繋がりがなきゃ駄目なのか?
繋がらないと安心できない?
おいらにはわかんない。
でも翔くんが不安に思うなら、それを解消し
てやりたいとは思うよ。
「智くん、しよ?」
そんで、そんなに胸にキュンとくる甘くイケ
めた顔でお願いされたら…
おいらだって流されそう…
おいらだってさ…
でも、
「 やだ 」
やっぱ無理。
だっておいら達には解決しなければならない
大きな問題があるだろ。
それはどっちがどっち?
ちゅーもんで、自分本意で決めたらいかんこ
とだ。
翔くんは完全においらをされる側認定してる
みたいだけど、そんなん納得できん。
二人の関係は平等公平公正なはずだから。
……それに、他の人からの想いが詰まった沢山
の包みがある場所でヤル気になんてなれない。
何よりも大切だっておいらを抱き締めた腕で、健気な想いを受け取ったんだろ?
誰よりも好きだと言った口で『ありがとう』って笑ったんだろ?
………おいら、翔くんが好きだ。
大好き、大事で大切な存在だよ
だけどさ、ちょっとわかんなくなった。
翔くんを信じていいのかを……
unhappy valentine
凸凹問題未解決事件