お山の妄想のお話です。
『どこかで夕飯をとって行こうか』
水族館の帰り道、後部座席でずーーーーーっ
と飽くことなくさとちゃんの寝顔を見つめて
いたぼくにお父さんは言いました。
チャイルドシートにダイオウをギュッと抱き
しめて座るさとちゃんは小さなお口をすこう
しあけてすぴすぴおねむ中です。
その姿たるや天使そのもの。
まさに天使、確実に天使、天の使いそのもの
です。
くるんとカールして長く密集した睫、筋の通
った小さなお鼻、薔薇色の頬、さくらんぼの
ような可愛いお口。
そして、そこからちょろりと流れ出ている甘
露の雫……
その天からの御慈悲を頂いてもいいですか?
今にも零れ落ちそうなその雫に、まるで蜜に
集まる蝶のようにぼくも引き寄せられてしま
います…
どんどん顔が近付き、あと少し♡
という時に冒頭のお父さんの言葉。
ぼくはとても不機嫌になりました。
蜜を吸えなかったのもさることながら、こん
なに愛愛しい寝顔のさとちゃんを起こそうと
言うのです。
「お父さん、ぐっすり眠っているさとちゃん
を起こそうというの?可哀想だよ、寝かせて
あげようよ」
「う~ん、そうだな、よく眠っているしこの
まま家に帰って少し休もう。ふふ、それにし
ても可愛い寝顔だな」
お父さんはバックミラーからチラリと後ろの
座席で眠る天使さまを見てデレッとした顔に
なりました。
流石ぼくの父親、嗜好が似ています。
しかし、いくらお父さんでも釘を刺しておか
なければ。
「お父さん、ぼくは同担拒否だから」
「は?同担…何だって?」
頭の上にクエッションマークを浮かべるお父
さんを無視してさとちゃんを見ると、残念な
事に口許の甘露は消えていました……
どうやら眠りながらもさとちゃんが自分で拭
ってしまったようです。
「 あああっ……」
思わず悲痛な声を出してしまったぼくに気付
いたお父さんが、またバックミラー越しに此
方を見ています。
「翔どうした?変な声を出して?」
「………何でもないよ」
ぼくは思いました次の車は三列シートにして
もらおうと、そしたらぼくとさとちゃんは一
番後ろの席に座ります。
そうすればお父さんからの過剰な詮索をうけ
ることなくさとちゃんと蜜(密)です♡な時が
過ごせます。
家に到着するとぼくとさとちゃんはお風呂に
入ることになりました。
水族館ではしゃいで汗をかいたからです。
普段子供同士は危ないからと一緒に入れない
お風呂ですが、今日は違いました。
自分はお出掛けの片付けをするから、2人で
入浴しなさいとお父さんが言ったのです。
この時程『お父さんの子供で良かった』と思
った事はありません。
いいえ、天は我に味方した?
神はぼくの善行を見ていてくださったのですね……全て神の思し召し。
ぼくは神に託された天使さまと浴室に向かい
ました。
好きな子との初めてのお風呂……
緊張と興奮で思うように服が脱げないぼくの
となりで、さとちゃんはポイポイと服を脱ぎ
桃のようなcuteなお尻をふりふりさせてお風
呂場へと入って行きます。
「さとちゃん!ちょっと待って!1人でお湯
に浸かったらダメだよ!」
ぼくは小さな子のお風呂での危険性を思い出
して言いました。
小さな子はほんの少しのお風呂の水でも溺れ
てしまうことがあるのです。
「うん、わかった!しょくんはやくきて~」
さとちゃんの楽しそうな声が聞こえます。
ぼくは引きちぎる勢いで服を脱ぐと急いでお
風呂場へ入りました。
お風呂の中は湯気が立ち込め、そこに窓から
の陽が差し込んでホワホワキラキラと幻想的
でした。
まるで雲の中みたい、その中に本物の天使さ
まが手に小さきアヒル隊長を乗せニコニコし
ながら立っています。
ここは天国?!
いえ、風呂場です。
いやいや、ぼくにとってはある意味天国と言
っても過言ではありません。
だってさとちゃんが、全裸のさとちゃんが、
外国の天使像さながらな姿でぼくの目の前に
いるのですから……
さとちゃんのお顔、わあ可愛い。
さとちゃんのおっぱい、わあ可愛い。
さとちゃんのおへそ、わあ可愛い。
さとちゃんのさとちゃん……わあ!可愛い♡
ポトリ、ぼくの鼻から不浄の液体が零れまし
た。それは一滴ではなく次々と溢れます。
「きゃあ!しょくん!ち!」
さとちゃんが驚いて寄ってきます、ぼくは大
丈夫たからとさとちゃんを落ち着かせて指で
鼻の付け根を押さえました。
しばらくすると鼻血はとまりましたが、幼児
のお風呂の危険性と同じくらい思春期のお風
呂の危険性を感じました。
「しょくん、だいじょぶ?」
「ごめんね、心配させて、もう大丈夫だよ」
また不浄の雫が落ちるといけないので、さと
ちゃんをイスに座らせて背中から洗う事にし
ました。
白くて小さな背中には翼はありません。
良かったと安心しました。
だって今は隠している翼が具現化したら、
きっと自由なさとちゃんはぼくを残して何処
かに翔んで行ってしまうから。
『 翔 』という名でも人間のぼくは飛べない
のです。
さとちゃんが翔んで行ってしまったら、ぼく
は泣いて泣いて涙で日本を沈没させるやもし
れません…
小さな背中は直ぐに洗い終わりました、次は
前です。
ぼくの体が異常をきたす前に洗わなければと
あちこち視線を背けながら何とか洗い終わり
ました。
「さあ、さとちゃんはお湯に入っていいよ」
「………………うん」
その間はなに?とさとちゃんを見れば、何や
ら難しい顔でぼくを見ています。
「どうしたの?」
不思議に思い訊くとぼくの下半身を指差し言
ったのです。
「もじゃない」
もじゃ?もじゃとは?
ぼくがキョトンとしていると
「じいじもじゃもじゃ、しょくんない」
あ!もじゃってお股に生えるあれですね。
さとちゃんはいつもお父さんとお風呂に入る
から、皆もじゃがあると思ってるのかな?
「さとちゃん、大人にならないともじゃはな
いんだよ。だから子供のぼくやさとちゃんに
はないでしょ?」
「しょくんこども?さともこども!」
今までどうして自分にもじゃがないのか不思
議だったのでしょう。
ぼくにも無いのがわかって嬉しそうです。
さとちゃんが嬉しいとぼくも嬉しい♡
にこにこしながら無邪気な姿を愛でていた
ぼくに天使さまは心胆を寒からしめる言葉を
告げたのです……
「しょくんちーさい!さととおんなじ~」
「 !!!!!!!!!! 」
その言葉にぼくは打ちのめされました。
大きさを問われれば、大きくはないでしょう
しかし、ぼくはまだまだ成長途中の子供なの
です!
「さ、さとちゃん、ぼくは子供だからまだ
大きくないの!今から大きくなるんだから」
「う?いまから?」
「そうだよ、お父さんより大きくなるから!
楽しみにしていてね♡」
「……?うん??」
そうさとちゃんに宣言して、2人で湯船に浸
かりました。
さとちゃんが100まで数を数える間、ぼくは
どうしたら例の部位が大きく成長するのかを
ネットで調べようと思いました。
櫻井 翔
「何これ?最後の『思いました。』しか作文
ぽさがないじゃねえか!」
「そうですか?じゃあ小説扱いにして下さい」
「はあ?小説だと?ちょこっとファンタジー
を盛り込んだだけの変態文をなんのジャンル
に分類すんだよ」
「変態文とか失礼ですよ、これは純愛小説に
分類されていいと思います。もしくはぼくと
さとちゃんの愛の軌跡を綴った伝記です」
「いやいやいやいや、それ違うから」
「松岡先生は何故何時もぼくを否定するんで
すか?もしラ〇べあたりから出版されても先
生の本にはサインは入れませんからね!」
「いらねえし!出版されねえし!ラ〇べに謝
れ!ラ〇べなめんな!」
「なんなんですか?やけにラ〇べに肩入れす
るんですね、まさかその歳で愛読してるとか
………」
「読んでねえし!」
「そうですか、そうですね。先生が読むのは
袋とじのある雑誌でしたね」
「変な言い方するな、大人の雑誌だ!袋とじ
には夢が盛り込まれてるんだぞ!」
「ぼくの文章だって愛と勇気が溢れてます!」
「あんぽんたんめ!何が愛と勇気だよお前の
文は卑猥なんだよ、そんなん有害図書に指定されるわ!」
書きかけの「ぼくさと」があったので
仕上げましたが……
我ながらよくわからない文です。
今日は仕事で疲労困憊です~