お山の妄想のお話しです。




かずがキレた。

家に帰ってから今日の事を話した、
最初に感じた通りあの人は運命の人だったと。
かずはゲームをしながらただ黙って聞いていた
俺は話し終えてかずの反応を窺ってみた。
暫くして、ゲーム機をテーブルに置くとかずは
真剣な顔でこっちを見たんだ。

「あんた、本気で言ってる?」
「本気でなきゃ言えないだろ」
「相手には断られたんでしょ」
「話すくらいならいいって」
「脈なしじゃない、おやめなさいな」
「嫌だよ、諦められない」

かずに何を言われようと俺の意志は固いんだ。

「自分の気持ちだけで付き纏うなんて、相手には迷惑なだけじゃないの?」
「迷惑かもしれない……でも嫌われてはいないと
感じるんだ」
「  ………………  」
「時間がかかってもいいんだ、俺に心を開いてくれるまで待つつもりだよ」
「………へえ、粘るんだな」
「あの人だけは諦めるつもりはないから」
「………なんだよ、それ」

かずの顔からすっと表情が消えた、でも瞳だけはギラギラとしている。

「そうか。じゃあ、あいつのことはキレイさっぱり忘れてその運命ってのに従うんだな」
「………忘れるとかじゃなくて」
「まさかその運命の人やらとうまくいったら、あいつとは友達としてまた付き合おうとか思ってんじゃないだろうな!
あんたが余計な事をウジウジ考えてあいつに冷たい態度とって、どれだけあいつが傷ついたかわかってんのか!」
「智くんには酷いことをしたと思ってる、
でも、違うんだよ」
「何が違うんだよ!あんた見損なったよ、自分の都合が良いようにばかり考えやがって」
「かず、そうじゃないんだ」
「うるせえ!俺はあんただからあいつを諦めたのに……」

かずは悔しそうにぎゅっと唇を噛みしめた。

「………俺はあんたの知らないあいつの気持ちを知ってる。あんたに避けられてあいつ自分を責めたんだ」
「なぜ?智くんは何も悪くないじゃないか」
「あんたに嫌われたと思ってる、だから避けられてるんだって思ってんだよ」
「どういうことだよ」
「さあな、今さらどうでもいいだろ。
あんたが選んだのはあいつじゃないし。
ただ、あんた達がお互いに気持ちを打ち明けていたらこんな事にはならなかったのにな…」

かずの言葉の意味が理解できない。
俺が一方的に避けたから、嫌われたと勘違いさせてしまったかもしれないけれど。
でもなぜ智くんが自分を責めるの?
何も悪くはないのに。

「かず、聞いてくれよ。俺の運命の人って…」
「うるせえ、俺には関係ない」
「そんなことない、と思う。あのな」
「聞きたくねえつってんだろ!あんたの運命の人なんて興味ねえ。それよりも二度とあいつに関わらないでくれ、今までみたいに距離をおいてあいつを放っておいてくれ。俺はあいつが悲しむ姿なんてもう見たくねえんだよ!」

そう言い残してかずは部屋から出て行った。
智くんを想っていたかずだから、俺が智くんにした事が許せないんだろう。
俺がとった態度で智くんを傷つけ、そしてかずまで傷つけていたんだな。

かず、ごめんな。
智くん、ごめんなさい。


智くんにもう関わるなとかずは言うけど、
それは出来そうにない。


ただかずには俺の運命の人を知って欲しい。
何故俺が諦められないか理解して欲しいんだ。


きっとかずだってマキさんに会えばわかってくれるはずなんだ………