お山の妄想のお話しです。




お嬢さん達は家の車が迎えに来るので駅のロータリーで見送った。
流石お嬢様学園の生徒、外車のお迎えだ。
3人を見送り、おいらも岡田の車の停めてある駐車場に向かう。

駅を突っ切り反対の出口に出る。
女装で1人きり、心細くてたまらん。
人目に付かないように壁にへばりつくように歩いていたのに、何故かおいらの前に2人のチャラついた大学生がいる。
ついでに道を塞がれてるし。

「ねぇ彼女、ひとり?俺達と遊びに行かない?」
「あ、もしかして警戒してる?大丈夫だよ、変なことしないから~」

いやいや絶対に付いて行ったらアカンやつでしょ。身の危険を半端なく感じるわ。

「ごめんなさい…  急いでるんで……」

できるだけ女の子っぽい声を出してみた。
まあ、声は小さくなっちまうよな。
そしたらそいつら「え?なに~?」とか言いながら顔を近付けて来やがった。
近え。
ちゅーか、近すぎる。
こんなに近くだと化粧の粗とか見えるんでないかい?
したら女装してるってバレる?!
周りをちらりと伺うと駅近だから人通りが多い、ここで男とバレて騒がれたらとんだ羞恥ぷれいやん。

ヤバイ。とりあえずこいつから離れないと。
おいらは近い方の奴の顔に手を置いてぐいと押し返した。

「いたたた、痛いな。きみ結構力あるんだね」

手首を掴まれる。

「なんだか、今ので首が痛くなっちゃったよ。
きみ責任とって看病してくれる?」

そう言って細い路地の方へおいらをぐいぐい引っ張って行く。
この手慣れてる感、こいつらこんな悪行を繰り返してるんだな!乙女の敵め!
逃げるついでに、ちょっと成敗しちゃるか?

おいらは引かれるままに進んだ。
人気がない方がおいらにだって好都合だし
さて、どうすっか。
大声を出される事なく、尚且つ動きを封じる技。追いかけられたら面倒臭いからな~
あれしかねえな。
おんなじ男としてはアレだが、しょうがねえ。
大丈夫安心しろ、ちゃんとこれからも機能するように手加減すっから

技名〖金蹴り〗※急所蹴りともいう
まさに一撃必殺。

なんだか今日のストレスをこいつらで晴らせそうだ。
高校生の頃は岡田と一緒にいたからよく物騒なことに巻き込まれてたけど今は殆どないんだよな。ここのところ御無沙汰だった黒いおいらがひょっこり顔をだす。

どっちからやっかな~

ニヤニヤしながら前を歩く2人を見ながら考える。
まず、おいらを引っ張る奴からだな。
んで間髪を入れずにもう1人を…
脳内でのシュミレーションは完璧、後は実行あるのみ!

その時背後から大きな声がした。

「お前らその子をどうする気だ!!」

振り返るとそこには1人の高校生が立っていた。おお、イケメン!正義の味方決定!

「なんだよお前、オレらはこの子とちょっとお話しすんだよ」

そうだよね、と振られおいらはブンブン首を横に振った。

「違うみたいだけどな」
「だからってお前に関係ねぇだろ!」
「女性が困ってるのを見過ごせないんでね」
「なんだとぉ」

おいらを挟んで対峙する男達

一色触発!

自分でやれないのは残念だけどここはイケメン君に頑張ってもらおう。
でもここに居たら巻き添え食うな?

おいらは掴まれた腕を払い除けるとイケメン君
に向かって走った。
イケメン君はおいらを後に庇うと「大丈夫?」と優しく笑って言った、なんだよこいつイケメンすぎるぜ。

イケメンに護られるって悪い気しねえ
なんてぽーっと思っていたら

「小栗!なにやってんだよ!」

もう1人、彼と同じ制服のイケメンが姿を現した。
こっちは濃いな………

…………。
あれ~、なんか見たことあんな~こいつ~
すっごい最近見たわぁ…




………なんなら今朝見たかも。