お山の妄想のお話しです。
いたたまれなくて、申し訳なくて、罪悪感でいっぱいになった。
智くんの夢を見て……なんて……
どうしてなんだろ、何で?何でだ?
なんだか智くんを汚しちゃったような気持ち。智くんは俺を「親友」って思ってくれているのに、俺は智くんをエロい目で見てるのか?
こんな気持ちの悪いヤツ嫌だよね
俺、きっとどこかおかしいんだ。
会えなすぎて、心の病気になったんだよ。
ごめんね、智くん。
俺、頑張ってもとに戻るから。
でも姿や声を聞いたらまたおかしくなるかもだから、少しの間連絡しないよ。
中学受験を口実にして、俺は智くんと距離を置くようにしたんだ。
智くんも俺の態度に何かを感じ取ったのか、段々とメールや電話の回数が減った。
そのかわりかずとは頻繁に話すようになって、かずから智くんの情報を聞くようになった。
今ではかずの方が智くんに詳しい。
無茶苦茶嫌で悔しかったけど、病気が治るまで我慢するんだと自分に言い聞かせてた。
なにをもって完治とするか。
[智くんでエロい事を連想しなくなったら]
これしかないでしょ。
勉強して勉強して、疲れたら幼稚園の頃の智くんの写真を見て癒される。(ピュアだった頃を思い出せと念じながら)
でもどうにもならない時もある(生理現象だよ、察して)やっぱりあのDVDの映像がチラホラしだしたりして……
そんな時は
『智くんを穢すな、智くんを穢すな……』
呪文?いや念仏か?必死に唱えて何とか乗り切るしかない。
なんなんだ?修行僧か?
中学に入った後は、友達(悪友)に官能的な本や未成年はみちゃいやんなDVDを借りてお世話になるようになった。
智くんのあれ(ちっぱい)を思い浮かべてもやもやする事もなくなった。
もう大丈夫だと、思えたのが中2の夏。
あのDVDを普通に見られる様になった、智くん達可愛いなぁって思うだけ。
きっと前の俺に戻れたんだ!
だから会いに行こうって考えてた。
お小遣いも結構貯まってたし、会って前みたいに笑い合いたい。ふわふわと優しい時間を過ごそうって。
なのに、部活の顧問が休みの間に結構な数の練習試合を組んでいて智くんの所に行く時間が取れないんだ。
今日も他校で練習試合。
この頃何でか女の子達が集まって来るようになって、チームメイトはそっちが気になるらしくていいプレイができない。
俺の事も『さくらいく~ん♡』なんて馴れ馴れしく呼んでくるし。
チームメイトには試合に集中しろと言いたいし
外野には帰れ!と言いたい。
こんな試合のせいで智くんに会いに行けないなんて怒りしかないぜ!
結果は散々なものだった。
これは長い説教が待ってるなとウンザリしながら顧問の所に向かっているとかずの声がした。
『しょう兄~』
空耳か?だってかずがこの炎天下の中、俺の試合なんて見に来る訳がないし
『しょーにー』
もう一度かずの声が聞こえてそっちを見たら
大きく手を振るかずと、その隣には
『 智くん? 』
数年前よりはるかに大人びた智くんが立っていた。
俺はその姿に釘付けになって動けない。
智くんも俺をじっと見て、ふにゃっと笑った。
ずっと変わらない笑顔だった。
それから小さく手を振るとかずと一緒に歩いて行く。
突然の思いがけない事態
俺は追い掛ける事も出来ずにただ呆然と遠ざかる2人を見ていた。
顧問の長い説教の後、急いで家に帰るとかずがいた。
『智くんは!』
どこにいるのかと聞いたら、もう帰ったよとあっさり言われた。
親戚の法事で隣県のお祖母さんの家に来ていて、帰る前に少しだけあった時間でここまで来たという事だった。
『翔くんと話したかったけどもう時間がないから帰るって、さとちゃん淋しそうだったよ』
『そうか…』
かずはじっと俺を見て何か言いたそうにしてたけど、結局何も言わなかった。
布団に入って今日の智くんを思い浮かべる。
サラサラで長めの髪、優しい眼差しはそのままだけど中性的な顔立ち、細い首、華奢な体、南の島にいる筈なのに何故か肌は白くて………
その晩、とうとう智くんでしてしまった。
これだけは駄目だとずっと戒めていたのに
俺は『病気』ってずっと自分を誤魔化してた
でも本当はそれが何なのか気付いてたんだ
でもそれを認めてしまったら智くんにもう会えない…
こんな感情はいけない事…
男同士なんて普通じゃない。
きっと智くんに気持ち悪いって思われる…
そんなの迷惑だって言われるよ
智くんに嫌われたくないんだ、
だからこの気持ちは隠さなきゃならない…
違う、隠すんじゃない、失くさなきゃならないんだ…
なくして、また親友だって笑えるようにならなきゃ
この「 恋心 」が完全に失くなるまで、
今度こそ俺は智くんに会えないんだ
ぱるぷんて