お山の妄想のお話しです。





その後さとしくんと同じ小学校に入学した俺は楽しく幸せな日々を送っていた。

小学校では流石に上級生のクラスに行けないからお昼休みの時にしか遊べないけど、登下校は2人だけ。(さとしくんと俺の家は意外と近くだった)

待ち合わせの小さな公園から学校までの10分位の時間をたわいのない話をしながら歩くのが好き。
朝はさとしくんの眠そうな姿を見ただけで笑顔になれる(たまに凄く前衛的な寝癖の時があってその時は爆笑)

帰りはその日にあった嫌だった事を話したり
する時もあった。
そういう時の俺はムッとしてたり拗ねてたり、嫌なやつだったと思う。
そんな時でもさとしくんは話を最後まで聞いてくれて、そして穏やかに笑って言ってくれる。

『だいじょうぶだよ、しょうくん』

その言葉を聞くだけで何だか本当に色々な事が大丈夫に思えてきて心が落ち着くんだ。


ある日のお昼休み、校庭でさとしくんを待っていた。
でもなかなか出て来なくて、どうしたんだろ?って教室を覗きに行ったんだ。

2年1組、そーっと前の扉から中を覗くとさとしくんと女の子が2人でプリントを分けていた。
一生懸命お仕事ををするさとしくんに女の子は時折話しかけて、さとしくんもニッコリ笑って返事をする。

そんな光景を見て俺の心はズキズキもやもやイライラ。

そのまま自分の教室に戻ると机に突っ伏した。

ズキズキ、もやもや、いらいら

なんで俺こんな気分なの?ちょっと分析。

さとしくんが女の子と2人でいるのにズキズキ
(その子誰!?)

話し掛けられるのを見てもやもや
(俺のさとしくんだぞ!)

女の子にニッコリ笑い返すのにイライラ
(なんでそんなにニコニコしてんの!)

俺以外に笑顔を向けるさとしくんがイヤだったんだ。

クラスで仲の良い友達が女の子と楽しそうに話してたってこんな気持ちにならないよ。

なんでだろう?なんでさとしくんだとこんなに嫌なの?

俺、やきもちを妬いてる?

さとしくんは俺にとって何?

さとしくんは大好きでとっても大切な……
大切な……友達?……ちょっと違う気がする…
友達よりもっと特別な人。もっともっと大好きな人。
そういう人を何て呼ぶのかな?


帰り道さとしくんは昼休み行けなくてごめんねって謝ってくれた。
先生に頼まれたプリントをもう1人の当番さんと分けてたって。
あの女の子も当番さんだったんだ…

なんだかホッとしたけど、やっぱりもやもやは消えなかった。


家について、ずっと考えていたけど解らなかったことを母に訊いた。

『友達より大切で大好きなひとってなんなの?』

母は『親友じゃないかしら?』と言った。

急いで部屋に戻り辞書を引く

しんゆう[親友]
お互いに信頼している仲の良い友達

……これかなぁ

ちょっと違う?

もうひとつ母が苦笑いしながら言った言葉も調べる

『翔ったら、まるで智君に恋でもしてるみたいね』

こい[恋]
〖男女のあいだで〗好きで、会いたい、いつまでもそばにいたいと思う、満たされない気持ち

………こっちかな(知らない言葉は調べたよ)
「恋」の方がちかい気がする。
でも男女って男の人と女の人って事だよね?
さとしくんと俺は男の子だから違うのかな?

結局わからなくって、その後長い間もやもやし続けることになった。




三〇堂国語辞典より
また長くなってしまいました…
想い出編(?!)は後少しで終わります。