お山の妄想のお話しです。







『どうしたの?』

声のした方を見ると、知らないコが俺を見上げていた。

目尻の下がった大きな瞳。
うるうると潤んでいてキラキラ輝いている。

大人が見たら『激かわっっ』と悶絶ものだっただろうけど、まだまだ子供の俺には警戒心しかなかった。

誰?!こんなコ知らない!!
このコはあいつらの仲間??

だったら弱味は見せられない!
でも始めて見るコだよ?
どうなの?助けを求めていいの?

プライドと気弱な心の鬩ぎ合いが始まった。
この状況から救って欲しい気持ちと
誰だかわからないやつに弱味を見せたくない負けず嫌いな気持………

雅紀に言わせたらパルプンテ状態だ。

黙ったままじっと見つめるだけの俺にその子はちょっと困った素振りをして、フニャッと笑うとジャングルジムを登ってきた。

あっという間に俺の隣にきたその子は、やっぱりフニャリと笑った。
なんか近いし、凄く可愛い…ちょっといい匂いもする…
同じ組の女の子なんかより可愛くて、俺はドキドキしてしまった。

『さっき、はやかったね~』

えっ!?さっきって?
何のこと??

疑問が顔に出ていたらしい。

『?さっき、きょうそうしてたでしょ?』

してました。

『いちばんだった、しょうくん?でしょ?』

はい、そうです。
てか、名前まで知ってるの?

『みんな、いってた。しょうくんがいちばんだって!だからしょうくんでしょ?』

『……うん。そうだけど…』

そうだけど、あなたは誰???

『さとだよ。おさかなぐみなの。』

おさかなぐみは年長さん。
だから知らないコだったのか…

あいつらの仲間じゃないみたい。
可愛さとほんわかした雰囲気に警戒心がとけていく

『みんないっちゃったけど、しょうくんはいかなくていいの?』

『いかなきゃダメだけど…』

『おりられないの?』

その通りです。面目無い。

『そっかぁ、こわい?』

『………こわい……』

もう泣きそう。

『じゃあ、さとがおしえてあげる!』

さとちゃんはそう言うと俺にまず座る様に指示をした。

『あのね、まんなかからおりたらいいよ』

真ん中とはジャングルジムの正方形の中らしい。
確かに手、足共にどこに置くか選択肢は外側から降りるより広い。

『そこにぃあしをおいて、てはここぉ』

不安ながらさとちゃんの指示通りに手足を動かし少しずつ降りていく。

ゆっくりゆっくり、やっと地面に着いて
ほっとしてさとちゃを見上げると
『がんばったね~』
って言ってくれた。

その笑顔がふわふわ可愛くて思わず見とれているとお教室の方から『自由時間は終わりで~す、みんな戻って~』と言う先生の声がした。

さとちゃんはスルスルとジャングルジムを降りると俺の手をきゅっと握った。

『いこ。しょおくん』

『うん!』

俺もぎゅっとさとちゃんの手を握りかえした。


向けられる笑顔や繋いだ手にドキドキする。

この子の事がもっと知りたいしもっと一緒にいたい……

今まで誰にも感じたことのない想いが心の中に湧き出してきた。

きっとこれが恋の始まりだったんだ






駄文で失礼しました。