朝、立て続けに、海がいいよって


聞いた。


そろそろ海に行きたいなぁ、


と思いながら、中々行けずにいた。


ハッ!として、よし、今から行こう、って。


台所の片付けはそのままに、


慌てて洗濯回して、


ちょうど出掛ける夫に


駅まで送ってもらうことにした。


なんで、今、海?って


訝しがりながらも


それ以上突っ込まないところが


この人の良さ。


人の行動をいちいち詮索しない。


見習いたいところ口笛


で、もうすぐ、駅、っていうところで


あ、財布変えたの忘れてた…。


カードもお金も入ってない。


今日はやめとけってことかなぁ、


って、思ったら、時計が11:11。


バス代は現金しか使えない。


‼︎3千円ちょうだい!って


中学生のように


少ない夫の財布からセビリ口笛


スムーズに来た電車に飛び乗った。


思いの外、あっという間に海。


誰もいない。いや、ほんとに誰もいない。


見渡す限りいない。


この世にはもう、


私しかいないんじゃない?


くらい、いない。


開放感でいっぱい。


お腹の底に響くような


力強い波の音。


ザッバーン、ザッバーンって。


一年前と違って


今はもうしっかりと、


その自然の力強さを受け止められる。


今日は元気を貰いに来たんじゃなくて、


あげに来た、くらいの勢い。


早速裸足になって波と戯れる。


気分と懐は少女口笛


曇っていたからゆっくり出来た。


肌寒いくらい。


そろそろバスの時間だし、って


用意してバス停に行くと、


あ、乗り遅れた。


完全に時間を間違えた。


確認したんだけどなぁ。


時間に追われなくなったから、


緊張感がなくなって


更に数字に弱くなったらしい。


2時間来ない。


流石に海は満喫した。


迎えに来てもらおうか?って


電話したら出ない。


行けるところまで行ってみようと


思って歩き始めたら、


1時間を過ぎるあたりから


足が付け根からちぎれそうになった口笛


犬の散歩は夫が行くようになったから、


当分歩いていない。


おっかしいなぁ、絶好調なのに。


って思っていたら


源平合戦の古戦場跡地って、あった。


あ、何となく察しがついた。


昔から平家物語が好き。


人間ドラマが凝縮された感じ。


清盛の傍若無人ぶりも


それでいて情に流されて、


滅ぼされるところも


わかるんだよねぇ。


田辺聖子さんの著書で知った川柳。


「懐に抱いていたのに滅ぼされ」って、


後に揶揄されてるけど、


そういう甘い、人間臭いところが好き。


知盛の総大将という立場を


護るために、若き息子が


身代わりになって討ち死にする。


戦に戦を重ねて、


日頃は何とも思わなかった鎧の重さが


今日は堪える。


「見るべきほどの事をば見つ」


そう言って海の藻屑と消え行く、


このくだりも授業で習って


印象に残っていた。


何年経っても、人の想いは変わらない。


たくさんの人の喜びも悲願も無念も


抱き込んで今がある。


当たり前の日常は


当たり前ではなかった日々の積み重ね。


バスや車の有り難みを


身に沁みて感じながら


感無量となった。