コロナ禍もそろそろ終盤に差し掛かり、道場では地稽古もやるようになってきた頃、稽古終わりに、先生に声をかけた。
どのように竹刀を持てば、左手の小指に力が入りますか
先生は正しく答えてくれた。質問は成功した。
左右の手のひらを、柄に真横から当てて竹刀を持つ。右手は左に、左手は右に柄を押す。手のひらは柄に密着させて、打つときもずらしてはいけない。肘は伸ばしきらない。これで振ったらテニス肘は治る。
そういう説明をしながら、竹刀を持って、振ってみせてくれた。
見ながら真似をして、それでいいと言ってもらえる形になった。
私の左手は、左手の小指は、柄をしっかり握っていた。こんなに握れているのは初めてだった。
これを身に付けたい、と心から思った。
また試行錯誤が始まる。でも、ゴールは見えてきた。
私のゴールは、左の肘を伸ばして打つ、から、左手一本で打つ、に、いつの間にか置き換わっていた。
脱力、脱力と言われ続けて、なぜそんなにも脱力しなければいけないのか、と疑問を持ったからである。
私の考えた答が確かならば、竹刀は、中段からでも左手一本で打たなければならない。
習った左手の握りは、ゴールまで連れていってくれるに違いなかった。