稽古する場を増やしたお陰で、指導してくれる先生や先輩剣士が増えた。


稽古のあとにいろいろ教えてもらえるのはとてもありがたい。


でも、教えてもらえたことも、ほとんどがピンと来なかった。


よく言われたのが、「攻めがない」「竹刀を振り回しすぎ」「小さく打てていない」「間合いが近い」「左足の引き付けが遅い」等々


そう言われても、正直言って、身に覚えがないのだ。


稽古中の私の動作の、何を指してそう言われているかもわからない。わからないから質問も出来ない。何をどう変えればいいのかも。


とりあえず、右手打ちを直す以外のことは、後回しだ。とりあえず覚えておいて、右手打ちを直してから取り組むことにした。


いろんな人の教えの中でひとつだけ、実践できる教えがあった。曰く、「竹刀が重すぎるんじゃない?もう公式戦にでないなら、規定の重さよりも軽くていいんだよ」


これは、正直言っておどろいた。大学生のときに三尺九寸の成人女子用の竹刀にしてから、私は確かに竹刀の重さに苦労していたのだ。


竹刀を軽くすることには抵抗があった。中学、高校、大学と竹刀は長く重くなるものだったから、ここで軽くすることは、一歩後退するような気持ちと、ずるいことをするような気持ちがして、すぐに買い換えることはしなかった。


でも、その先生は繰り返し、「きっと竹刀が重いんだよ」と言ってくれた。


これは大事な手懸かりかもしれない。


一人電車に乗って、少しの後ろめたさとともに、三尺八寸の高校生用の竹刀を買いに行った日のことを、今でも覚えている。