前回、前々回の続き。
井上戦を境にドネアのスタイルが変わった。
これまでは身体のバネを活かし、飛び跳ねるような足の使い方だった。ここ2試合は重心を低くしてすり足で相手の距離を詰め、左フック、左アッパーで仕留める。
省エネで安定感が増した一方、かつての様に踏み込んで左フックを打てなくなった。
井上戦の頃のドネアは昔を取り戻そうとしながら戦っている様に感じた。だが今のドネアは完全に別のスタイルになった。その為、この試合は再戦でありながら井上は別の相手と戦うつもりで臨んだ方がよいかもしれない。
踏み込みの無くなったドネアが相手なら、井上程の能力があれば勝つだけなら難しくない。ジェイソン・マロニー戦で見せた距離を取ったストレート主体のボクシングをすれば今のドネアはスピードと距離に対応出来ないと思う。
だが、打ち合ってしまえば?
フィリピン国民が歓喜するシーンが訪れるかもしれない。
もう1つ、ドネアの自信が気になる。
親日家のドネアを悪く書きたくないが、ドネアは意外と臆病に思う。一度負けた相手とは戦わない。リベンジを口にするのは多分、井上が初めて。
デビュー2戦目の敗戦は見たことがないが(デビュー戦のビデオは残っている)、リゴンドー、ウォータース、マグダレノ、フランプトンの誰にも雪辱しようとはしない。つまり再戦を拒否する。何度戦っても勝てないと思い込むのだろうか?
所がプロ6敗目の井上に関しては再戦を熱望する。
何か勝算があるのだろうか?
ドネアの6敗(1敗目は知らないが)で一番、惜しかったのが井上戦かもしれない。残りは完敗だった。
「こうすれば勝てる」と言う何かをドネアは掴んだかもしれない。一方的な試合より競った試合の方が面白い。ドネアの秘策に期待したい。