相手はIBF王者アンカハス。
アンカハスを初めて見たのはマカオでパッキャオのアンダーカードに出場した試合。対戦相手の名前は忘れたがアフリカの選手だったと思う。
美しいボクサーだと思った。サウスポーのお手本の様な基本に忠実な戦い方、特に左ストレートは見事だった。元OPBFフェザー級王者 松本好二に似ていると感じた。
そのアンカハス、アローヨを降しIBF王者になった時はもっと伸びるかと思った。しかし、今の力はよくわからない。イギリス、オーストラリア、と場所を選ばずに戦うのは王者の鏡。
だが防衛戦の対戦相手のレベルは低く、前戦は引き分けの失態。コンラン兄戦の見事なKOは未来のスター候補と期待したものだが。
対する船井は叩き上げの長身ボクサー。
随分前に石田将大との長身対決で敗れた試合を見て、もう終わった選手だと思っていたが復活した。
日本のSフライ級では井岡、石田匠に次ぐ3番手。見た目以上にやり難いらしく、スポイラーの一面も持つ。
右と左の違いはあるが両者共にジャブから利き腕のストレートを狙う。一般論だと力量が五分なら、この展開はサウスポーが有利。不利をひっくり返すには前足をどこに置いて戦うか、ポジショニングが大切に思える。
駄目なパターンは急造ファイターと化すこと。この場合、アンカハスに左を狙い打ちされるだろう。自分の持ち味を殺さない為に、常に外側に周りジャブ・1-2を打つ基本に忠実なボクシングを期待したい。
船井が勝つパターンの一つで考えられるのは、上記の逆パターン。評価が下がり気味なアンカハスが倒そうとしてファイター化する可能性があった時。そうなれば船井は左で距離を計り、右カウンターを狙えばいい。
前戦でアンカハスが引き分け防衛をした事が王者のリズムを崩す可能性がある。
船井にとって厳しい予想を立てざるを得ないが、勝てない試合ではない。
無敗だったり、プロ数試合で世界を狙う昨今、
船井は着実に力を付けて初の世界挑戦。多分、年齢的に2度目の挑戦は難しい。最後のチャンスだと思い奮戦を期待したい。
因みにアンカハスが井上から逃げたと日本のボクシングファンから思われている。だがそれはアンカハスに失礼では?、と思う。
世界中で戦うアンカハスが日本を嫌がった理由。正解はアンカハス陣営にしかわからないが、一つに良い勝ち方をすればもう呼んで貰えない日本マーケットの閉鎖的な所に魅力を感じなかったのでは無いか、と推測する。
また、逆の立場で考えればテテから井上に南アフリカでの対戦のオファーが来たら、もしくはアンカハスから井上にフィリピンでの対戦オファーが来たら、仮にファイトマネーが高額でも受けるだろうか?
他ならぬ井上が「イギリスはいいけど南アフリカは………」なんて答えていた。
もし、対戦を断ってテテやアンカハスファンが「井上が逃げた」と吹聴すれば日本のボクシングファンは不愉快だろう。
私は単に開催地も含め条件が合わなかった、ただそれだけの様に思う。