「佐々木です。
足立亜美さんのお宅でしょうか?」
「佐々木さん?」
亜美の頭の中に優しい笑顔が浮かんだ。
「久しぶり~、やっとあなたに会えたわ。
元気そうで安心したわ。」
部屋に中に案内しながら嬉しい気持ちが止まらない。
「どうしてここに?」
「何年か前にハガキもらったから。
三人でフランスに居ます・・って。
何度かこっちには来ることがあったんだけど、時間が無くってね。
今日は主人の用事で近くまで来たから、どうしても会いたくってね。」
「ご主人は大丈夫ですか?」
「心配いらないわよ。
ホテルの周りでも散歩してるでしょう。
奈穂ちゃん、大きくなったわね。
もう四つ?
時間の過ぎるのは本当に早いわね。
まだ日本には戻らないの?」
「ええ、今のところは何も聞いてないんですよ。
主人の会社次第です。
あっ、そうだ・・、絵、見てもらえますか?」
「描いてるの?」
彼女は嬉しそうに言った。
「ここは日本と違う空気があるから、何を見ても新鮮でした。
休日には三人でピクニックに行って、私は絵を描いて、主人と奈穂はその近くで遊んでいます。」
「わ~キレイ。
すこくいいわよ~。」
「そうですか?
良かった。
私、誰も知らないようなステキな場所、探すのが上手いみたいなんです。」
「幸せそうで良かった。
頑張り過ぎてるんじゃないかって気になっていたの。」
「えっ?私のために?
ありがとうございます。
ここで佐々木さんに会えるなんて思ってもいませんでした。」
彼女は亜美に会うためだけにこの街にやって来たのだった。
二人が初めて会った時、彼女は亜美の描いた絵が好きだと言った。
あれから随分時間は流れた。
亜美は彼女のことを何も知らなかった。
それなのに、なぜか素直になれる相手だった。
年だって決して近いとは言えない。
お互いの生活している環境も違うだろう。
結局、そんなことは知らなくたっていいことなのだ。
なつみにも以前言った。
・・私たちが付き合っていく上で関係ない・・と。
お互いを認め合うことが出来て信頼が生まれたら、それだけで付き合って行ける。
亜美はそう思って今日まで生きてきている。
「そろそろ迎えの車が来るころだから、失礼するわ。」
「えっ?もう・・。
下まで一緒に。」
「ここでいいわ。
奈穂ちゃん、見てあげて。
元気でね、また会いましょう。」
そう言うと部屋を後にした。
入れ替わりに智也が帰って来た。
「下に車が来てたぞ。
日本人の迎えみたいだったけど、亜美のお客さん?
あっ、なつみちゃんか・・。」
亜美にはすぐわかった、どこかの奥様だったんだな・・と。