「あっ、高橋さん。」


剛が驚いた顔でガラスのドアを開ける。


「少しイイかな?」


「はい。」


中に入ってきてみんなに声を掛ける。


「高橋さん、久しぶりですね。


今までどこに行ってたんですか?


前はライブにだってよく来てくれてたのに、最近はちぃっとも・・。」


「遊んでたわけじゃないぞ。


それに、ちゃんと見てたよ。」


「気づかなかったです。」


「今日は、イイ話を持って来た。


お前たちを応援したいと言ってる人がいるんだ。


どうだ、一度会ってみるか?」


突然の話に返事をするのも忘れていた。


「おい・・。」


「あ・・。


お願いします。」


四人が声をそろえてそう言った。


「じゃあ、話を進めるから。」


そう言うと高橋は急いでその場を後にした。


一緒に喜んでいたい気持ちはあったが、四人だけにしてやりたかった。


亜美が彼らのことを頼むと言ってフランスに発った時から・・いや、彼女がとても嬉しそうに翔平たちの話をする笑顔を見た時から、いつの日かよい知らせを持って四人を訪ねたいと思っていたのだから。


翔平たちは突然舞い込んだ夢みたいな話に心は躍っていた。


喜びに浸っている暇は無く、それからの毎日は予想を超えるほどの忙しさだった。


朝早く出かけて行って、夜遅く帰宅。


そんな毎日が続く。


今まで一度も経験したことのない場所にいた。


何がどうなっているのかわからないままその日がやって来た。


十二月二十四日、クリスマス・イヴ。


CD売り場に並べられた『それ』を見たとき、走り始めたのだということを感じた。


テレビだったりラジオだったり雑誌の取材だったり。


ドキドキが収まらないうちにまた次のドキドキに襲われる。


そんな風にして記念すべきその日が終わった。


その次の日も、またその次の日も駆け足で一日が過ぎていく。


その努力が四人のところに成果として戻ってくる。


初めてのツアーが決まり新曲のリリースも決まった。


翔平たちには夢のような毎日。


ずっと心の中で描きつつけて来た場所。


初めての世界で次々と決まっていくスケジュール。


実力が伴っているのか、不安が押し寄せてくる。


でもそう望んだのは自分たちなのだ。


精一杯頑張ることで足りない部分がどれだけ補えるかはわからないけど、立ち止るわけにはいかない。




そんなある日、剛がポツリと言った。


「あのライブハウスが懐かしいな。


人なんかほとんど入っていなくて、なつみがいて望月さんがいた。」