翔平はいつの間にかソファーで眠っていた。


「疲れてるんだね。


昼間は宅配のバイトと学生、夜はバンドの練習なんだって。


一生懸命で真っすぐで・・私もそんな頃があったんだよね。


彼のこと、どう思う?」


「どう思うって言われても、わからないよ。」


「うん。


私、彼の瞳に引き付けられた。


何か光るモノが潜んでいる気がするの。」


亜美は眠っている翔平にタオルケットをそっと掛けた。


「どうして俺たちはこんな風になってしまったんだろうな。」


「私が夢に拘ったから。


ずっとそう思ってきたよ。


智也より大切なモノなんて無かったのかもしれない。


それなのに意地を張っていたのかな。


生まれて初めて夢中になれるモノに出会って、それを手放したくなかった。


でも、智也と別れた後の毎日を悔やみながら過ごしてきたわけじゃないよ。


上手く言えないけど、あの頃の私のことも結構好きなんだ。」


「俺は亜美の選択は正しかったと思ってる、


あの頃の俺には何も無かった。


亜美を好きだと言う気持ちの他には何も・・。」


「それで十分なんじゃないの?」


「俺も、そう思ってた。


でも今は違う。


ちゃんとした土台が無いと少しのことで壊れてしまう。


俺たちがそのいい例じゃないか。」


「土台って何?」


「説明するのが難しいんだ。


俺のことを俺がどれだけ理解してるかって考えた時、少し離れて自分を見た時とか、鏡に映る自分の姿の中に見えるモノ???


あ~、ゴメンやっぱり上手く説明できない。」


「フランスに行って何か変わった?」


「いや・・。


ただこのままじゃダメなんだ。


亜美は『自分』を持ってるだろ。


俺にはそれが自分で感じられないんだ。


俺って何だろう?っていつも考えていた。


答えが見つからないから、戻れなかった。


でも、亜美に会いたくて、ただ会いたくて戻って来たんだ。


亜美、俺がもし・・」


智也の携帯電話のベルが鳴る。