季節は巡り二度目の夏を通り過ぎ秋の気配が感じられるようになった。
1年以上かかって進めてきた仕事が終わった。
ココから先は信頼できる仲間に任せることになる。
その夜、亜美はいつもの店で一人静かに祝杯をあげていた。
そこは小さなバーで、カウンターの後ろに小さなテーブルが二つほどある。
マスターは、ここにやってくる馴染みの客に好みの酒をタイミングよく出してくれる。
決して大柄ではない彼の背丈、美しく整った顔は芸術作品だと言ってしまいたくなる。
余計なことは口にせず、たまに見せる無言の笑顔はとても温かく優しい。
馴染みの客はそんな彼に会いに来るのだ。
亜美もそんな客の中の一人だ。
仲間と騒ぐのも楽しいが一人になることを望むこともある。
後ろのテーブルには若い男女がいて、楽しそうな笑い声が聞こえる。
一人になりたいと言いながら、そのもう一方で寄りかかる肩が欲しいと強く思うことがある。
何気なく視線を移したその先には、一人の青年がいる。
まるで少女漫画から抜け出てきたような・・。
切れ長の美しい二重瞼が特に印象的で、髪の毛の色は明るめのストレート。
顎のラインに合わせて切りそろえられている。
一瞬、目が合ってお互い軽く頭を下げる。
「同じモノを下さい。」
そう言って彼はカラのグラスを前に出す。
マスターは黙って首を横に振る。
そして氷のたくさん入った冷たい水のグラスを彼の前に出した。
黙ってそのグラスに手を伸ばすと一気に飲み干した。
突然、隣の亜美に話し始める。
驚いて顔を上げるとマスターと目が合う。
(すまないが黙って少し話を聞いてやってください。)
そう言っているように見えた。