もう眠ろうとベッドに入ったのだが、さっきから身体がだるくて頭が痛い。


貧血のせい?


風邪??


向こうに帰ったらちゃんと病院に行くから、もう少し頑張って、ここには長くいられないのだから、沙耶は自分の身体に言った。


沙耶にとって心細く長い夜だった。


少し眠っては目が覚めての繰り返しの末、やっとやってきた朝。


沙耶は起きれないでいた。


隼人は、多分戻ってきていない。


いくらなんでも今ここに誰かを連れてくるなんてしない。


調子悪いな、最近。


横になっていればそのうち治るかと思ったがだんだん苦しくなってきた。


志保に電話をかけようと思っても、そこまで行かれそうにない。


そんな時、隼人は帰って来た。


それでも沙耶は声をかけられずにいた。


閉じられたカーテン、静かな部屋、物音一つしない。


そんな部屋の様子で隼人は沙耶は出かけていると思っていた。


シャワーを浴びて少し眠ろうと寝室のドアを開けて驚いた。


沙耶がいた。


てっきり出かけていると思っていたから。


こいつ、もしかして昨夜からずっとこうして眠ってるのか?


気分でも悪いのか?


この前だって倒れたし、あの夜だって・・、眠っている沙耶の顔をのぞき込むと一目で辛そうなことがわかった。


「沙耶、大丈夫か?」


「大丈夫。


こうして寝てればそのうち治るから。


心配いらないよ、どうせ風邪だから。」


「でも・・。」


隼人は沙耶の額にそっと手を当ててみる。


息だって苦しそうだ。


「熱あるぞ。


計ってみたか?」


「計れば治るってわけでもないし、何度あるかわかったらそれを見た時から病人になってしまいそうだから。」


大体に病気はしないタイプの人間だった。


人に自慢できる才能は持っていなかったが、健康な身体はちょっとだけ沙耶の自慢だった。


さっきまで苦しくて、心細くて仕方なかったのに、隼人の顔を見ただけで少しラクになった気がした。


何だろう、この安心感て・・。


「大丈夫なんかじゃないぞ。


ほら、これで熱計って。


・・熱あるじゃん。


三十九度二分。


医者、行こう。」


風呂上りの隼人は部屋着の上にロングコートを羽織っただけだった。


それなのに沙耶にはだるまと間違えられるのではないかというほど、あれこれと着せた。


「さあ、早く。」


「でも・・。」


「ほら、急いで。」


隼人は沙耶を背負って部屋を出た。


外の空気は冷たく肌を刺すように痛い。


隼人の身体の温もりが伝わる。


心臓のドクドクというのまで・・。


馨と違う背中。


馨と違う匂い。


そう感じた。


タクシーを止めて隼人の行く病院に急ぐ。


そこで注射を一本と薬をもらった。


「これで元気になるといいな。」


「ありがとう。


隼人、ゴメン、迷惑かけて。


やっぱり・・ここ出て行くから。」


結局、一人では何もできなくて、隼人に助けられた。


隼人が戻って来なければ、あのまま今も眠っていただろう。


「で、どこ行くの?


小松のとこ?


兄貴のとこ?


それがいいかもな。


・・だけど、ここにいてもいいぞ。


オマエ、俺を嫌いになりに来たんだろ。


気を遣ってないで早いとこ嫌いになってくれよ。」


そう言った。


隼人は頭の中で想像していた。


よくあるテレビドラマのようなシーンを。


沙耶、オマエは重い病気なのか?


それともホントにただの風邪なのか?


いつの間にか朝になっていた。


眠らずに沙耶のことを考えていた。


友達と飲んで朝になることは珍しくないが、最近こんな風に寝ないで傍にいることがよくある。