沙耶は大学を卒業して出版社に就職していた。
ファッション誌の担当で、洋服・アクセサリー・小物・・などの取材をしている。
特別やりたいと思っていた仕事ではないが、やり始めると面白くて引き込まれる。
季節を先取りして流行の先端を見ていた。
この仕事に就いてオシャレに興味を持つようになった。
身長百六十センチ・体重四十七キロと、特別太っているわけでもなく痩せているわけでもない。
そんな自分を洋服や小物で違う自分を作ることに楽しみを感じていた。
小柄な女の子に見えるようにとか、背が高く見えるようにとか・・。
外見をいくら変えてみたところで中身が空っぽなのだからどうしようもない。
でも逆に、中身が変えられないなら、外見だけでも・・そう思ったりもした。
自分のような女の子も大勢いると思った。
女の子はオシャレが好きで、新しいモノが好きで、本当に忙しい性分だ。
全ての人が当てはまるとは言わないが、きっと多い。
自分のためだったり、彼のためだったり、理由はそれぞれあるだろう。
沙耶はそんな彼女たちを何歩か後ろに下がったところから見ていた。
共通点は幾つもあった。
でも、肝心なところで違っていた。
誰といても何をしても、心から一生懸命になれない自分がいた。
その日は思ったより取材が早く終わった。
ここ二・三日ずっと夜遅くまで仕事が続いていたので、こんな日くらい早く帰って休むよう上司は言った。
こんな日は沙耶にとって一番怖い日だ。
時間に追われて走り回っている方が余計なことを考えずに済むので、気持ちとしては楽だった。
でも、少し身体の調子も良くなかったので帰って休むことにして電車に乗り家へと向かった。
寝る前に飲んだ卵酒が効いたのか沙耶はぐっすりと眠った。
秀と会う約束があることも忘れて・・。