列車はどこまでも走る。


目的地まで四時間余りの長い旅。


列車の窓からはいつの間にか真っ白な世界が広がっている。


枝だけになった木もあれば、緑の葉を今も変わらず茂らせているものもある。


その上に降り積もった雪がとてもキレイだ。


外を見ているのだが、意識として受け入れてはいない。


沙耶の頭の中はもういっぱいなのだから。


雪のあまり降らない所で育ってきた沙耶にとってこんなに深い雪は現実のものと考えられなかった。


テレビやラジオで積雪一メートルとか聞いたところで上手く想像できない。


朝、目が覚めた時には何センチか積もっていてもすぐに溶けてしまう、


それくらいのことなのだ。


吹雪になった。


目的地までたどり着けるのだろうかと不安に思った。


列車に人はあまり乗っていない。


近くの席で、年配の婦人が二人楽しそうに話している。


こんなにたくさん風が吹いていて雪もどんどん積もってきているのに、特にどうということもなさそうだ。


彼女たちにしてみれば雨が降っているのとそう大差はないのかもしれない。




考えれば考えるほど哀しくて涙が流れる。


いつか隼人は『涙も枯れて・・。』ってそう言ったけど、この涙はいつになったら消えるのだろう。


何が哀しくてこんなにも泣いているのだろう。


自分の生い立ちが知りたいのか?


あの家の娘であることを幸せだと思って生きてきただろうか?


当たり前?


疑問に思うことも無かった。


なぜ泣いているのか・・それさえもわからない。


思ってもいなかった事実に驚いたのは本当のことだった。


それだけのような気もした。




列車からバスに乗り換えまたしばらく走る。


バスを降りるとそこはとても静かだった。


彼の書いてくれた地図には目印にちょうど良い背の高い木があり、一本道の突き当りに家があった。


沙耶は周りを見渡す。


はるか遠くに家がある。


煙突から白い煙が真っすぐ空に向かって上がっている。


あの家かな~?


迷うことなどない、あの一軒しかないのだから。


とにかくあそこまで行かなければ・・、そう思った。


こんな靴、履いてこなければよかった。


一歩一歩雪に埋まる。


歩く道は雪が除いてあるのだが、この調子で降っているのだ、本当に周りに比べて少ないなあ、という程度の違いしかない。


ただひたすら歩いた。