「将人、安心しろ。


彼女、『生きて行く』ってさ。」


「結局、僕は何もできなかった。


こうやって遠くから見ているだけで、言葉をかけてやることも、抱きしめてやることもできない。


傷つけただけだ。」


自分の無力さを感じずにはいられない。


唇を噛みしめ、拳を堅く握る姿。


「将人、それは違う。


彼女はオマエのことを一生忘れない。


出会ったことを悔やんだりもしない。


今のままの自分じゃダメだって思ってるんだ。


だから、自分の中でほんの少し芽生えた小さな勇気を信じて、歩き始める覚悟をしたんだと俺は思う。


将人と出会って生きることを考えた。


彼女と話して俺も生きて行こうと思った。


別れの時が近づいていた。


二人は電車を待っている。


「亮太、そのヤケドの傷、残らなきゃいいな。」


「いいんだ。


将人のことも忘れずにいたいから。


乗らないのか?」


「僕はここで。


じゃあな。」


「ああ。」


電車の扉は静かに閉まり二人はお互いの姿をじっと見つめていた。


ゆっくりと動き始めた電車の窓に食いつくようにして将人の姿を見続けた。




「ただいま。


おふくろ、何やってるんだ?」


「見ればわかるでしょ。」


かき氷を一生懸命に擦っている美紀の姿。


電動のかき氷機をどうしても買おうとしない。


シロップは決まってイチゴ。


ガラスの器に高く積み上げられた白い山を満足そうに眺めている。


シロップをかけ、ミルクもたっぷり。


嬉しそうにスプーンを口に運ぶ美紀の姿に、心がホッとするのを感じた。




                                    完