学校は無条件に楽しかった。
テストも勉強も嫌いだったが、朝目が覚めると新しいエネルギーが身体の中を流れ始めるのを当然のこととして感じた。
自分勝手な楽しさでいっぱいだった。
しょうもないことでばか笑いをし、どうでもイイようなことでケンカをした。
ドロドロになったズボンやTシャツを汚そうに親指と人差し指でつまむようにして持ち洗濯機の中に投げ入れる母の姿。
あれからどれくらい時間が過ぎたというのだろうか。
家を出る前に母が左腕に巻きつけてくれた包帯の下の保冷剤も暑さのせいで効果がなくなってきた。
恐る恐るほどいた包帯。
「痛っ!。」
真っ赤になった皮膚が亮太の目に飛び込む。
「自分でそんなことをするヤツの気が知れないよ。」
後ろから突然、無神経に声をかけてきた。
激しく睨みつけた亮太に向かって彼は言った。
「ゴメン。
驚かせてしまったな。
でも、間違ってたかな、僕の言ったこと。
僕は将人。
ゆうれいなんだ。
驚かせついでに、かき氷、一緒にどう?」
「ああ、俺も食いたい。
ちょっと待ってろ、そこで買ってくる。」
「氷イチゴ、ミルクもかけて。」
将人は走る亮太の背中に向かって大声で叫ぶ。
ゆうれいだと言いながら、こんなに堂々としていて、しかも驚くほどずうずうしい。
おかしなヤツだと思いながら亮太の心が彼の存在を認めた。
それは・・、このキズがわざとだと見抜いたから。
学校での毎日が無意味に感じられる。
退屈な授業。
机に向かって学んでいるふりを続ける。
嫌だと言ったところで、それは最初からわかっていたこと。
それでも仲間と過ごす時間は楽しかった。
そんなある日、仲間の一人が交通事故に遭ってあっけなく逝ってしまった。
彼女の死を知らされた時も、葬儀の席でも不思議と涙は出なかった。
顔がいつもより青白く、頬に手を当てると冷たい。
ただ眠っているだけだと思いたかった。
だけどそれは夢ではなく現実の哀しい出来事だった。
彼女がいなくなったというのに、何も変わらない時間の流れや社会。
まあ、それは仕方がないこと。
今まで一緒に過ごしてきた仲間たちも新しい時間の中にいていつの間にか彼女のことを気にかける様子もなくなった。
「俺は、アイツと過ごす時間がとても好きだったことにさえ気付かすにいた。
そんな自分が大嫌いだった。
気分はいつもイライラしているか無気力でいるか、その両極端だった。」
「だけど、誰にも言えなかった。
全部を自分の中に・・、そうだろ?
だから、こんなことを。」
亮太は自分の心の中で起きていることを外に向けて吐き出すことが苦手だった。
とても辛いことに直面した時、ほとんどの人は何らかの形で気持ちを吐き出す。
そうすることによって少しづつ気持ちにケリをつけていく。
「亮太、もう少しラクに生きてみろよ。
オマエを見ているだけで僕は哀しくて泣きそうになるよ。」
「俺はいつもイイ子でいたかったから。
おふくろの笑顔が大好きだったから。」