七月二十四日、せみの声が身体に張りつくような暑さの中、亮太は自分の身体を傷つけた。

熱くなったアイロンは彼自身の手で左腕に押し当てられた。

思わずピクッと腕が動く。

思わず大きな声が出る。

母親はその声に驚いて騒がしく階段を駆け上がってきた。

「どうしたの?

何やってるのよ。

ほら、見せてごらんなさい。

ヤケド??」

亮太はズキズキする腕を見せた。

「いつもしないことをするからよ。
早く下に降りて水で冷やしなさい。」

美紀はアイロンを片づけながらまだブツブツ言っている。


十七歳の亮太と三十九歳の美紀。

二人が並んで歩いている姿は、親子には見えないかもしれない。

美紀の童顔と華奢な身体つき、亮太の長身と父親譲りの上品な顔立ち。

恋人同士にはさすがに無理があるが、姉弟ならうなずける。


彼女は今まで何不自由なく生きてきた。

亮太の父親と映画のような甘く熱い恋をして結婚し、二人の男の子の母になった。

長男の賢は、今年の春から一人暮らしを始め東京の大学に通ってる。

夫はと言うと、大手電機メーカーに勤めている。

忙しい日々にもかかわらず、結婚記念日と美紀の誕生日には花束をプレゼントしてくれる。

十九年間ずっと。

親子関係も、息子たちが幼かった頃と同じようにはいかないにしても、肝心なところでは繋がっていると信じている。


小学校のグランドには、子どもたちが一人二人と集まって来た。

どうやらソフトボールの練習が始まるらしい。

上級生の掛け声でグランドを何周か走り、簡単な準備体操、そしてキャッチボール。

一年生から六年生までだから身体の大きさにも差が目立つ。

お揃いのチームの帽子をかぶり、グローブを手に走っている姿は自然と見ている側の微笑みを誘う。

どこへ行くというあてもなく家を出た亮太は、何年か前に卒業した小学校にいた。

ブランコに腰かけてそんな小学生たちをぼんやりと見ていた。

彼らを見ていると自分がひどく大人になったように感じた。

(小学生かぁ・・。)


昔々に書いたモノですが、記録として残せたら~そう思ってここに。
よろしかったら、お付き合いください。