傷つけることが怖くて別れようと思った。
お互いのために離れてみたが、それで傷つかないわけじゃない。
だったら傍にいたい。
離れて傷つくくらいなら、傍にいて傷ついた方がまだましだ。
リュウはそう思った。
車はマンションの前までやってきた。
入り口に奈緒を見つけた。
(ずっとそこで待っていたんだな。
俺が戻るのをずっと・・。)
「奈緒。」
リュウのその声は届かない。
待ちくたびれて力尽きてしまったのだ。
駆け寄ってもう一度名前を呼ぶ。
「奈緒。」
「リュウ・・。」
消えそうな声でそう言った。
抱きかかえて部屋に急ぐ。
奈緒の身体は冷え切っている。
(中で待ってりゃいのに。)
俺を待ってる奈緒。
ただ何かを願うように俺を待つ奈緒。
奈緒の存在が捨てたはずの心を揺さぶる。
奈緒の存在が必要ないと思ったときめきを思い出させる。
奈緒、お前を二度と離さない。
進む道がどんなモノであってもつないだ手は離さない。
お前がいれば俺は強くなれる気がする。
リュウの言葉が奈緒に届いたかどうかはわからない。
リュウの腕の中から寝室のベッドにゆっくりと寝かされる。
「ありがとう。」
そう笑いかけた奈緒は安心して眠りにつく。
これから先のことはまだわからない。
このままずっと一緒なのか、どこかで別の道を選ぶことになるのか・・。
今、隣にいる人の暖かさを感じ、心が安らぐなら良いじゃないか。
隣で眠る奈緒を見つめそう思った。
奈緒のことは、そこで終わりにできなかった。
そうさせる何かがあったのだろう。
眠りながら泣いてる奈緒を何度も見てきた。
奈緒、お前の全部を抱きしめてやる。
二人で手をつないで並んで歩いてみないか?
愛しさが込み上げてくる。
時間をかけてゆっくり育んでいこう。
気持ちははっきりと決まったけれど、何と言って伝えたら良いのか言葉が見つからない。
奈緒の寝顔をすぐ傍で見ていられること。
そういう時を失いたくはない。
たとえ泣いている奈緒を見ることになっても、一人で奈緒が泣くよりはましだと思う。
真夜中にぼんやりとした意識の中、目を覚ました奈緒。
ゆっくり目を開けると隣にはリュウがいて優しい笑顔がそこにあった。
「リュウに会いたかった。
もうここに来てはいけないと自分に何度も言ったのよ。
リュウが私のことを好きじゃなくても、私がリュウを好きだと思う気持ちが減るわけじゃない。
いいの。
他の人のことを思ていても・・それはリュウの気持ちだから。
今、自分に嘘をついて進むことを選んだら、私は私でいられなくなる。
それくらいリュウのことが好き。
だから好きでいさせてください。
付き合うとかそんなことは言わないから。
ゴメンね、こんなところまで押しかけてきて。
ホント、面倒な女よね。
もうしないから。
最後にもう一度だけ好きだと言って・・。
最後にもう一度だけ・・て。
朝になったら帰るから。」