今までの奈緒だったら、このまま終わる。
いつもだったら歩き始めている。
思いをなるべくその場所に置いたまま。
泣くのも我慢して、いつもとなるべく変わらない自分でいようとする。
今、思うこと・・。
終わりたくない。
リュウを失いたくない。
リュウが傍でずっと支えてくれた。
リュウはこれで終わりにするつもり・・。
同じことが頭の中を回り続ける。
『お母さんへ
一人になってゆっくり考えたいことがあるので、しばらく一人で旅行してきます。
わがまま言ってごめんなさい。
お正月までには帰ります。 奈緒』
心配でたまらない気持ちを抑え戻ってくるのを待つことにする。
そんな時、陽子から電話がかかる。
「はい、加賀でございます。」
「私、陽子です。
こんにちは。
奈緒いますか?
携帯が繋がらなくて・・。」
奈緒の母親が話す間も与えず話す。
「奈緒は旅行ですよ。」
「どこにですか?」
「さあ・・、一人旅だから、気ままに思いついたところに行ってるんじゃないかしら?」
「わかりました。
ありがとうございます。」
学校が冬休みに入って毎日顔を合わせていた頃とは違う。
会おうとしなければ会わないし、メールもどちらも送らないと何もないまま。
それが不安なわけじゃない。
ただ、電話が繋がらなかったり、メールの返事がこなかったりすると急に心配になる。
特に用事が無くたって、声を聞くまでは気になって仕方がない。
古川さんと一緒かな?
大介に確認してくれるように頼むと、そこにはいないらしい。
どこに行ったのだろう?
一人で・・。
優斗のところには居ないだろう。
本当に旅でも楽しむ気になったのだろうか。
母に手紙を残して出て来たけれど、行く当てなどない。
こんな時、映画やドラマだったら・・、リュウが私を見つけてくれるのに・・。
現実はそんなに甘くない。
そう思った。
ヒロインは最後の場面で素直な気持ちを告げる。
自分にもそうすることができるだろうか。
あなたの言葉は信じない。
あなたのくれた優しさを信じる。
自分の心を信じる。
ただ傍にいたい。
その思いだけで奈緒はリュウのマンションに向かう。
あいにくリュウは留守。
今までみたいに勝手に部屋にお入るわけにもいかない。
その頃、リュウは奈緒を探していた。
大介に奈緒がいなくなったと聞いたらじっとしていられなくなった。
探すと言ったってどこをどう探せば良いのかもわからない。
奈緒が好きな場所。
・・俺の傍だ。
出会ったころからそうだった。
眠れなくなった奈緒が俺の傍では嘘のようにグッスリ眠る。
もしかしたら、マンションかもしれない。
奈緒の携帯は今もまだ繋がらない。
車を走らせマンションに向かう。