一睡もしなくたって結構普通でいられるものだと優斗はひとり呟く。
「おはよう。」
「優斗、文化祭でバンドの演奏するって聞いたよ。」
「時間あったら見に来てくれよな。
人が少ないと哀しいじゃん。
毎日、一生懸命練習しているわけだし。
オリジナル曲もやるかも?
まあ、期待しててくれて良いから。」
明るく笑う優斗を遠くで見つめながら、新しい何かを見つけたのなら良かった・・奈緒はそう思った。
仲間たちの中で楽しそうに話す優斗が好きだった。
そろそろ気持ちの整理をしないといけないな。
いつまでもこんな風ではいられない。
文化祭の準備ほど大変ではなかったがそれでも結構忙しかった体育祭が終わった。
クラス対抗混合リレーは盛り上がる。
男女各五名、計十名。
体育系のモノでは負けたことのないこのクラス。
今回もその思いは同じ。
体操着の前後に縫いつけられたゼッケン。
来年はもう無い。
「絶対勝つぞ!」
そう優斗が大きな声で叫ぶ。
クラス全員が繰り返す。
選手たちは入場門へと向かう。
その中に、将太・優斗・陽子・奈緒もいた。
スタートのピストルの音とともに走り始め歓声が上がる。
昨日の雨で少し柔らかくなっているグランドを走る。
放課後の練習の成果か見事優勝。
最後だと思うとその嬉しさは今まで以上で、クラスメートの中には感激の涙を見せる女子もいた。
みんなで抱き合って喜んだ。
何もかもが夏休み前に戻った気がした奈緒。
そんなことあるわけないのに、そうだったらいいのにと思わずにはいられなかった。