優斗は文化祭の準備とバンドの練習で一日が終わる。
ふと一人になった時、心に浮かぶ優しい笑顔。
別れを告げた日の奈緒の涙顔がずっと心の中にある。
将太のオリジナル曲に付けられた詩。
切なさが伝わってくる。
優斗の頭の中で一つのドラマが生まれる。
美しく微笑む女(ヒト)。
その裏側で心はいつも泣いている。
愛することから目を逸らし、求めることもしない。
希望を持たず、日々を過ごす。
それでも生きることからは逃げようとしない。
痛みだけを受け入れることが彼女の意志。
優斗は歌の中の彼女の心にいつの日か光が射すことを願っていた。
将太から渡された紙袋の中にもう一枚のCD-Rを見つけた。
パソコンんで再生してみる。
ピアノで録音されている。
(将太って、ピアノ弾けたっけ??
アイツの母さん、ピアノの先生だった・・。
弾けるよな、やっぱり・・。)
ピアノの音色が、優しくて心にスッ~っと入り込む。
耳に残るメロディー。
思わず何度も繰り返し聞く・聴く・聴く・・。
覚えてしまった。
そしていつの間にか朝が来た。
新聞配達のバイクの音が聞こえる。
もう朝なのか~。
もしかして徹夜??
そう、ただ同じ曲を何度も聴きながら朝が来てしまったのだ。
曲のイメージを自分の言葉で表してみる。
短いドラマの主人公は『奈緒』。
そして隣にいるのはいつも俺『津田優斗』。
こんな自分のこと、おかしくて誰にも話せやしない。
未練タラタラで情けない。
昨日、学校で何かが違うと思いながら、それが何かずっとわからなかったことがある。
奈緒が「津田君」そう呼んだこと。
今頃、やっと気が付いた。
『友達には戻れない』そう言った言葉の意味を今頃知るなんて。
同じクラスになって、親しくなって『優斗』そう呼ばれるようになった。
それ以前の二人に戻ったってことなんだな。
奈緒に別れを告げて心が軽くなったはずなのに、日を重ねるようにだんだんと重くなる。
優斗の口から出た短い言葉・・。