「陽子と奈緒ちゃんは後ろに乗って。
運転は竜がするから。」
「奈緒、ほら乗ろう。」
車は静かに動き始める。
「ねえ、奈緒ちゃん、陽子は学校でちゃんと勉強してるの?
俺の見た感じじゃ、学校に遊びに行ってる感じしかしないんだけど・・。
どうなの?」
「大介がそんなこと言っていいのかな~?」
横から竜が口をはさむ。
「ちゃんとやってるよね、奈緒。」
「はい。
真面目かどうかはわかりませんが・・。」
陽子の方を少し見て答える。
「生物の西って知ってる?」
「はい。
一年の時担任でした。
でも、転勤されましたよ。」
「へ~そうなの・・。」
三人が声をそろえて言う。
「陽子は知ってるでしょ。
一年の時、担任だったじゃないの。
まさか覚えてないってことは無いよね。」
「それは覚えてるけど、転勤したのは・・ちょっとわからない。」
陽子無関心さには少し驚いた。
「ふ~ん。
口うるさい先生だったけど、三年間ずっと担任だったんだ。」
「古川さんってどんな生徒だったんですか?
私たちと一年だけ重なってますよね。
大介と一緒じゃなかったでしょ?」
「クラスも違ったし、部活も違ったし、一緒にいたことは無かったな。
塾が一緒だったんだ。」
二人とも塾なんて行きたくなかったけど、親孝行のつもりで行っていた。
なのにサボってファミレスでノートを写したりしていた。
「懐かしいな、十代の頃の話。」
そんなに時間が経ってるわけでもないのに、随分過去のことのように思えた。
楽しい会話が続いていたが車は山道を登り始める。
さっきまで騒がしかったうしっろの座席の二人が静かになった。
「ねえ、気分悪い?
少し休もうか?」
「いえ、大丈夫です。
陽子が眠ってると静かですね・・。」
そう言うと奈緒は外の景色をぼんやりと眺めている。
しばらく上ると川原が見えてきた。
もうすでに何組かのグループがバーベキューを楽しんでいる。
思っていたほど暑くも無く風も吹いていて気持ちがイイ。
「こんにちは~。」
挨拶を交わしながらちょうど良い場所を探す。
「この辺にしようか。」
大介は、持ってきた荷物を置き準備を始める。
「じゃあ、ここに運ぼう。」
「何か楽しくなりそうね。」
陽子の笑顔。
「私たちも何か手伝った方がいいんじゃないの?」
何をどうしたら良いのか全くわからない奈緒はウロウロしてばかりいる。
「奈緒ちゃん、イイから・・。
陽子と一緒にその辺に座ってジュースでも飲んでいなよ。
もう少し準備が出来たら手伝ってもらうから。
それまではお姫様気分でいるといいよ。」
この人のこんな優しいところも陽子は好きなんだろう。
「ね、奈緒、古川さん、ステキでしょ?」
「うん。
でも、私は・・・。」
「深く考えずに今日は楽しもうよ。
せっかく大介があんなに張り切っているんだから。
それに、ここ気持ちイイね。」
「そうだね。」
何もしなくてイイと言われたので、大きな石の上に二人並んで座って素足になって川の水に浸けてみる。
二人の笑い声が響く。