では前回予告のとおり、家の性能シリーズ、はじめます。記念すべき初回は雨水対策から!



日本はもともと湿度も高くて雨も多いところ。

しかも家の構造には木がいっぱい使われるので、水気は大敵。



水気と聞くと湿気とか結露が気になる人の方が多そうですが、それは次回の予定!(たぶん長くなるしね・・)



今回は空気中の湿気は一旦忘れて、外から来る雨や水にフォーカスします。



  • 水がコワい理由
  • どこから水が入る?
  • 対策としてできること
  • 住友林業の雨対策




  水がコワい理由

家を建てるための木材。棟上げ前に雨の予報だと木が濡れてしまう・・とか結構心配になりますよね。



ただしきちんとした木材を使ってたら、短時間の多少の雨がかりは大きな問題ではないようです。もちろん雨に濡れないよう保管する前提ですが。


キーワードは木の乾燥。



木も生きている間はもちろんたっぷりと水分を含んでます。そして建築用に使う木材は、通常しっかりと乾燥させてから使います。


しっかり乾かすことで強度が上がりますし、水分が抜けることによる割れや曲がりも防止してくれます。


さらに一度乾いた木材は、吸放湿するので調湿効果も見込めます。優秀。


一度しっかりと乾かしてしまえば、雨がかかったくらいの水分は表面のごく一部が吸収して、雨が止んだ後に自然と放出されるそうです。




あれ?じゃあ家建てた後も、雨で濡れても大丈夫なんじゃ?というと・・。


残念ながら大丈夫じゃないのです。程度問題ではありますが。


実際のコワい写真をご紹介(見た目的に苦手な人もいそうなので最後に載せときます)。新築6年でバッチリ腐ってしまったおうちらしいです…



長期間水や湿度に晒されると、乾燥させていようがやっぱり腐朽していきます。

しかも家のもう一つの大敵シロアリも、湿った木材は大好物。水気を遠ざけるに越したことはありません。






  どこから水が入る?


家の周りできちんと防御の層を作って、防水処理をしていくことが重要。


屋根(瓦、スレート)や外壁(サイディング、モルタル)などが最初の防御層になりますが、水はそれくらいでは防げません。

雨がどこかから入ってくる前提で、内部に二次防水として防水シートを張ることになります。



シートを貼っても入ってくる?Yesみたいです。確かにラップ一枚巻いただけだと、液体はすぐ突破してきますよね。タッパーに入った筑前煮とか。


水が侵入してくるパターン整理すると侵入パターンだけでもお腹いっぱいになるくらい。



この資料にはかなり詳しく書かれてますが、例えば:

  • 防水シートを止める針であいた穴から侵入
  • 防水シートの長さが足りない、しわになっている部分がある
  • 屋根と外壁の間にある隙間から侵入


基本的に水の侵入が起こりやすいのは、建物の素材が変わる部分。取り合いと呼ばれます。


例えば屋根と壁が切り替わる部分は危ないところだし、同じ壁でも窓のサッシと壁の取り合いはリスクが高いです。

逆に同じ壁がまーーっすぐ伸びてる部分は、よっぽどのことがない限り大丈夫。水は壁を突き抜けれるわけじゃなくて、隙間から入ってくる。



あとは風との組み合わせで、雨は思わぬ方向にも動く。屋根裏の軒天と呼ばれる部分に通気口を設けることが多いですが、

風があると真下を向いている軒天通気口からも普通に雨は入ってくるみたいです。

なので大丈夫!と思わず、きちんと入った後のことを考えてくれる施工会社の方がより安心ができそう。




  対策としてできること


水が入ってくる原因は様々で、施工を丁寧にすれば防げるものもあれば、雨風が強ければどうしても防げないようなものもありそうです。


少なくとも水が多少なり入ってくる前提で。それをいかに早く排出するか考える方が現実的みたいですね。

次回の湿度対策の方でこのあたりにも触れることになりそうです。


あと雨対策について、施主として考えられることをいくつか考えてみる。


なお最近流行りのモダンな軒ゼロ住宅はどれもリスク大きい構成を取りがち。せっかくの注文住宅。施主がやりたい場合はやる方がいいけども、一緒に家を作るパートナーには雨漏り対策がどうされるのかをしっかり確認してからしっかり考えてくれている会社を選ぶと良さげ。



軒をできるだけ深くとる(軒ゼロにしない)

家の軒は雨を防いでくれます。感覚的にはわかりますよね。でもどれくらいの範囲を?


下の画像は軒の長さによって、どの程度雨のかかる範囲や雨量が変わるかを示したものです。青が濃いほど強く雨のかかっている部分になります。


左/真ん中の図にある90cmの軒であれば、屋根と外壁の間(取り合い)に雨が入らない一方で、

右側の軒15cmだとかなりの雨量が壁にかかってくる計算です。


石川廣三:軒の形状・寸法に応じた外壁面内の雨がかり分布の算定方法、日本建築学会構造系論

文集 664 号, pp.1069-1075, 2011 



軒を深くしても雨がかりに違いが出るのは壁の上部だけならあんまり意味がない?と思いきや、

先ほどの屋根と外壁の取り合いが非常にリスクが高いことを考えると、軒は大事なところを守ってくれているとも考えられます。


バルコニーやめる

建物の上側は通常は屋根があります。でもバルコニーは例外。2重に防御している屋根ですら雨漏りのリスクがあるところ、バルコニーはフラットな床で生活空間の一部にしないといけないので、より雨対策が難しいポイントに。


一番簡単な方法はバルコニーをやめてしまう。建築費も下がりますし、バルコニーは10年とかで雨対策をしないといけないのでランニングコストも同じく下げれます。


怖いのはメンテをきっちりせず、気づいたら雨漏りが発生しているパターン。特にルーフバルコニーだと下が部屋になってて、雨漏りのダメージが大きくなります。



平らな屋根を避ける。屋根勾配を大きめに。

キュービックなデザインの家にする場合など、最近は結構フラットな陸屋根と呼ばれる屋根が採用されることが多いみたい。


屋根が斜めになっているのは、降ってきた雨が溜まらず流れていくようにするため。陸屋根はその分リスクが高くなります。

あとはパラペットと呼ばれる、フラットな屋根の端にある立ち上がり部分。ここも施工に気をつけないと雨漏りの事例が多いみたいです。


あと人気で言えば片流れの屋根も多くなってる気がしますが、高い方の屋根の裏面を伝って流れる水の対策など気をつけねばならぬそう。





  住友林業の対策


すみりんは標準でもかなり軒が深い(うちは雨樋含めて90cm)ので、それはメリットかな?土地の条件が厳しい都市部はいくら標準でもちょっと難しい場合も多そう・・。あとは防水シートの施工は当然あるし、まあまあ及第点くらいかなぁ?という印象。


そういえば一つ良いポイントとして。おそらく壁の防水シートは、タッカー止めしても水漏れしない止水の仕組みがある製品を使ってるようです。


myHome Parkというすみりんの家の紹介サイトでは、防水シートに釘を打っても水が漏れてこないというのを実演してました。

とはいえシート自体をすみりんが独自開発してるわけでなし、結局は市販の製品ではあるんですが。


セーレンという会社のものみたいなので、ルーフラミテクトというルーフィングと同じ仕組みなのかな。外壁用ではなさそうだけど。


後編で、湿気にフォーカスした記事も書きました!『家を守る性能とポイント② 湿気編』家の性能シリーズ。前回の雨水対策に続けて今回は湿気対策です。高温多湿、木材住宅の多い日本では切り離せないもの。木材の乾燥、吸湿などの性質や、水が入ったら家がど…リンクameblo.jp




  おまけ: 腐食した構造躯体




実際の劣化写真はこちら。

国総研の 「長持ち我が家を築く!造り手との情報交換ツール」 からの引用です。



壁に使っている合板が腐ってしまった写真。柱もダメそうです。



バルコニー部分が腐食して完全に穴が空いてます。