陽動クライベイビー
自分のなかの獣性にほとほと呆れ果てる、このままでは本当に人を殺してしまう、それも肩がぶつかったとか勘違いとかそんな取るに足らない理由で、それはおれと社会のつながりがおれにとって肩がぶつかったとか勘違いとかウェルニッケ野のカンピロバクターとか取るに足らない理由になりさがったときに果たされてしまう、なにがかなしいか、それはまるで人間のように振る舞ってきたであろうこの失語の29年間が殺人のために一瞬でけだものの野性へと押しこめられてしまうことへの悔恨だろう、おれのパーソナルスペースはもう半径30cm程度の円柱にすぎない、おれは座ることも眠ることもできずにこの円柱の中でじっと命がつきるのを、そのからみついた意識の麻績の破綻を待っているばかりの痩せこけた枯木と同じなのだ、美しい妄想とトリミングされた現実の乖離があまりに大きくなってしまい、おれは何も悟ることができなくなっていく