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三代目WEB桟敷

力士分析などを行う相撲研究サイト「大相撲パラサイト」のブログです。

最後に、合計点。項目ごとの軽重は加味しておらず、これが総合順位というわけではないが、合計点の高い力士は各要素でバランス良く高評価を得ていると言える。

 

1位 琴櫻

2位 霧島、藤ノ川

4位 翔猿、佐田の海

6位 大の里、王鵬、安青錦、平戸海

10位 時疾風、若元春

12位 御嶽海、熱海富士、狼雅、伯桜鵬、若隆景

 

3年前は1位タイが4人だったが、琴ノ若が改名、隠岐の海引退、錦木と志摩ノ海は十両に転落しており、フレッシュな顔ぶれとなったが、琴ノ若改め琴櫻が、さらに点数を伸ばして単独首位となった。

 

襲名勢がベスト10中5人。古い四股名は音色が良く自然な構成になっており、由来もしっかりしている。個性という点では伸ばしにくいが、総じて高評価となる。

 

現代的な四股名では、やはり翔猿、そして新顔の安青錦、狼雅の健闘が目立つ。いずれも師匠の四股名を活かしつつも、新鮮味がある。

 

<首位>

横綱の名を復活させて琴櫻が最上位。三代に渡るストーリーはドラマチック。琴ノ若の名を大関に引き上げてからの改名という心遣いがこれまた泣かせる。琴・櫻と和の文化を掛け合わせた構成、響きも美しい。あとはこの四股名を再び横綱に引き上げられるか。姥桜と揶揄されてもいい、時間を要しても叶えてほしいところだ。

 

<2位>

霧馬山から改めた霧島は、地位で並んだ際に師匠から譲られた。一番出世を果たした弟子に譲るケースは、親子以外では久しぶりだ。師匠の故郷である名高い景勝地そのままとあって、四股名としては相応しい。モンゴル出身で全く地縁がない点で地名を背負う四股名は若干違和感があるが、かつての大関の四股名となれば、もはや土地を離れた価値を持っている。

 

電撃的に襲名したばかりの藤ノ川も高評価。明治から続く伝統ある四股名が30数年ぶりに響いた。今牛若丸と謳われた先々代のイメージに沿う、スピード感溢れる取り口。先代は190センチ超の巨体でイメージが違ったので、オールドファンには嬉しい復活だ。これも純和風ですっと入ってくる四股名だ。ただ、若干字や構成が平凡過ぎる気がする。

 

<4位>

やはり二代目の佐田の海がランクイン。父の師匠・佐田の山は近代横綱史に残るあっさりした名乗りだが、出羽海の師匠ともなると箔がつくもので、令和にも生き残っている。苗字が基となった四股名というのも、目新しさには欠けるが、素朴で四股名としては悪くない。初代は故障で昭和を前に引退したが、2代目は平成・令和をしぶとく生き残り、37歳で敢闘賞。

翔猿は前回も書いた通り、現代的命名の傑作。追手風部屋といえば師匠からとった大翔○が支配的だったが、変形することで、忍者っぽくなり、相撲ぶりともマッチした個性的な四股名となった。

 

<6位>

横綱大の里が初登場、上位につける。隆の里、稀勢の里と続く「里」の系譜を守りつつ、王道の名乗り。系統は違うが昭和初期の大関と同じだが、「の」は大師匠、師匠に合わせて区別できるのも良い。類まれな体躯にも合っており、ノンストップの出世で瞬く間に大きな四股名を自分のものにした。

 

安青錦と平戸海も初登場。安青錦は難読奇読の類ながら、師匠安美錦のオマージュの精度が高く、新鋭らしからぬ相撲巧者ぶりも師匠譲りなのが高ポイントだ。対照的に平戸海は古風な名乗りが、「土の匂いのする」叩き上げのイメージにマッチ。歴史ある故郷の地が四股名らしさを引き立てる。

 

前回も6位だった王鵬は、優勝決定戦に出て関脇も経験。名前に実力が追いついてきたが、大鵬を継ぐのであれば年齢的には正念場。まあこのままでも十分いい四股名だと思うが。当ランキングでは若干不利な音読み四股名の雄である。

 

<10位>

若元春は前回10位から繰り上がり。祖父と父からとった「若」に、三兄弟入門を機に毛利三兄弟を合わせた四股名に改名。出世は遅れて若隆景の兄として登場したが、弟の故障離脱中も三役常連として活躍。次男吉川元春ばりの剛腕ぶりを発揮して、由来は抜群。あ行が続いて偏ってアナウンサー泣かせな若隆景より少し上。

 

初登場の時疾風がこれに並んでベスト10入り。時天空系のクールな四股名でバランスがいい。小兵ではあるが、現状疾風というほどスピードタイプではない。速さを磨くか、旋風を起こすか、個性とマッチしてくればさらに伸びる余地がある。

 

<その他>

初登場を中心に触れておく。本名ながら師匠から一字受け継ぐ形になった嘉陽は、珍しい苗字でなかなか面白く「嘉ん陽賞」。師匠と「同系色」の朝紅龍は「色(しょく)ん賞」か、それとも安青錦ともども「偽装賞」か。沖縄方言を用いた美ノ海も「宜野う賞」としたかったが、惜しくも宜野湾よりもう少し北のうるま市出身だった。

 

新入幕優勝の尊富士。「たける」の読みがどうしても腑に落ちないが、字面、音色は整っている。金峰山は、師匠コダワリの地元読みで「きんぼうざん」なのが漢字変換に困るが、昭和戦前期にいそうな雰囲気の四股名で貴重だ。

 

新入幕ながら優勝争いを盛り上げた草野は、宮城野部屋入門を公表後に伊勢ヶ濱預かりとなった経緯もあって、両師匠とも遠慮したか改名話の出ないまま幕内まで来てしまった。失礼ながら草野では四股名らしさも独特さもない。そろそろほとぼりも覚め、代替りもした。新師匠から大器に相応しい命名を。やはり照は入れたいか。義理で鵬を入れておくか。案外路線継承で富士を続けるか。