大の里三度敗る!
しかも40歳8ヶ月の玉鷲に。
昭和15年に39歳で記録した大潮(通算最多勝利をマークしていない方の大潮)の記録を更新し、年6場所制どころか昭和以降の最年長記録をマークした。
未だ体力十分の大ベテランとはいえ、どこか慌てた印象の新横綱。
右差し狙いを見越して、立ち合い少し左に動いて左おっつけ右ハズで押し上げるなど、徹底して右差しを防いできたため、左から入った。組み止めてしまえば、と右で上手も取って寄って出たが、うまく回り込んだ相手を追うと、やってはいけない上手の側へ寄る形となった。下がりながらするりと身をかわして剛力の右手から突き落とす。不十分な左差し手の肩口を上から押さえつけられ、もんどり打って土俵下転落。
優勝争いはいよいよ混沌としてきた。
単独首位の一山本は、1敗を堅持した。明生の左差し防いで、突き押しで退けた。初顔から3連敗していた相手を圧倒したあたり、進化を感じさせる。
これで大の里とは2差。上位戦が組まれることは必至だが、どこまで逃げられるだろうか。
他の2敗力士は、6人とも勝って勝ち越した。
霧島は平戸海に撹乱されたが、浅い両まわしを掴むとすぐに寄って出た。
安青錦は昨日琴櫻に快勝した金峰山をあっさり這わせた。
草野は宇良を終始攻め立て、後ろ向きから一か八かの一本背負いを落ち着いて外し、送り出し。
琴勝峰は美ノ海との突いていなしての攻防の末、土俵際でうまく体を入れ替え掬い投げの勝ち。
御嶽海は十両湘南乃海に左差し勝って寄り切り。実に7場所ぶりの幕内勝ち越しを決めた。
そして殊勲の玉鷲である。
この中では実力では霧島だろうが、実績では同じく優勝3回の御嶽海、2回の玉鷲も負けていない。琴勝峰もかつて楽日相星決戦を戦っている。だが安定感は幕内3場所目の安青錦が上回るか。簡単に負ける感じがしない。しかも残りは平幕ばかりである。十両連覇に続き新入幕優勝を狙う草野も底が見えない。
とはいえ、複数回の優勝経験がある3人にしても、直近の成績の推移を見ると経験が活きて有利とはいえない。終盤5日間を無傷で乗り切ることは想像し難い。一山本にしても上位戦はこれから。
やはり、優勝ラインは3敗にまで降りてくることが現実的。
3人の平幕に対して自力優勝の目が無くなった横綱にも、チャンスはある。王鵬に真っ向攻め勝った髙安も虎視眈々と悲願を狙っている。熱海富士、隆の勝、下位に控える実力者は最後までノーマークで取れそうだ。だが、この4人はさすがにもう負けられない。
大本命が崖っぷちから追う形。毎日最右翼が入れ替わる、スリリングな優勝争いが楽しめそうだ。
