令和6年夏場所後半戦へ | 三代目WEB桟敷

三代目WEB桟敷

力士分析などを行う相撲研究サイト「大相撲パラサイト」のブログです。

 

 大荒れの前半戦

 

初日、なんと1横綱4大関が全滅

5人以上の上位全滅は平成18年秋(朝青龍、千代大海、魁皇、栃東、琴欧州、白鵬)以来。

この時は、負けが込んでいた栃東、魁皇に加えて、残る3大関がそろって2敗目を喫すると、全勝の横綱まで稀勢の里に屈した。

初日からというのは昭和以降初。

 

さらに上位陣には悪い意味での連続が。

2日目、豊昇龍は連敗。照ノ富士と貴景勝は連続途中休場。複数の上位陣が同じ日に不戦敗は8例目と意外に少なく、できるだけ避けていた事態ということだろう。土俵上での不慮の負傷が重なったならともかく、共にぶっつけ本番で臨んだあげく一日取って同時リタイアでは批判は免れない。

 

照ノ富士は4場所連続休場ー優勝ー3場所連続休場ー優勝ー2場所連続休場。

コンディションが整えば実績を残しているとはいえ、白鵬式の延命策はさすがにもう通用しない。

同情的だった横審の反応も確実に厳しさを増してきた。そろそろ何ならの勧告をいただいてもおかしくない。

 

貴景勝は3場所連続。先場所は辛くも勝ち越してから休んだので陥落はしないが、大関が3場所続けて休むのはなかなか珍しい記録だ。仮にもその前の場所は綱取りをかけていたから限界説には立ちたくないが、一つ踏み外せば転落の危ない橋を渡り続けている。

 

そして最大の誤算は、霧島の連続絶不調。在位5場所目、優勝も果たし、綱取りまであと2勝まで迫った気鋭の大関を待ち受けていたのは、あっけない陥落劇だった。鋭い身のこなしを武器とするが、首の不調で明らかに方向転換に支障をきたし、悪いなりに誤魔化せるタイプと見ていたが、それも効かない泥沼に陥った。先場所も4勝10敗の千秋楽に意外にも上位を食うという師匠の綱取り場所譲りの成績を残したな、と変なことを思い出したが、奇しくも師匠の陥落場所と酷似した1勝6敗8休を残して出直しとなる。優勝1回、初代霧島の縮図のような大関成績だった。が、まだ若い。つい半年前まで最も安定していた力士。再起を期待したい。

 

それだけでなく、今場所は前場所の覇者・尊富士、3年ぶりに三役復帰した朝乃山が初日から休場。連勝スタートの髙安も持病の腰痛が出て途中休場。さらにまずまずのスタートを切っていた関脇若元春と、祟られたように看板力士が休場してしまった。

御嶽海、剣翔も足を庇いながらの土俵である。さすがにこれだけ休まれると物足りない。

 

 

 優勝争いは

 

大ブレーキの上位陣を尻目に、宇良が唯一6連勝スタートだったが3連敗。初日横綱戦初勝利をマークした新小結大の里は、先場所の雪辱を狙う1敗ターンを決めたが、9日目平戸海を呼び込んで2敗目。単独首位に出るチャンスを逃した。琴櫻を右半身のまま寄り切る馬力は健在だが、相手も圧力をずらして反撃してくる。巨体に似合わず華麗にかわしてきたが、ついにまともに呼び込んで墓穴を掘った。

幕尻で頑張っているのが再入幕の宝富士。9日目に粘り及ばず美ノ海に押し倒されたが、2敗で勝ち越しに王手をかけている。

9日目を終えてトップは2敗。敗れた2人に、琴櫻、御嶽海、湘南乃海が追いついた。

 

とはいえ御嶽海は苦しい。中日に縺れて土俵下に落ちた際に左ひざか太ももかを痛め、土俵の上がり下がりも辛そう。そんな状態の相手の一か八かの立ち合い変化をまんまを食らう金峰山はあまりに無警戒だった。なんとかあと1つ、8勝目を拾ってから休みたいのが本音だろう。

湘南乃海もそれほど好調にも見えないが、大きな身体が生きる展開に持ち込み白星を稼いでいる。

 

念願の琴櫻を名乗った大関は、初日大栄翔との突き押し合戦に敗れ、6日目は大の里との1敗対決で左上手から中途半端な投げで出足を呼び込み完敗。そのほかもさっさと引いて勝つ相撲も見受けられ、悪く評すると重さを頼りになんとか捌いているような印象がある。それでも首位に立ち、並ぶのは小結、平幕勢。直接対決を終えた大の里との争いが予想される。普通なら終盤にかけて上位戦を残す大関の方が割はハードだが、もう役力士は豊昇龍と阿炎しかいない。それ以外は勝ち越した好調力士との顔合わせとなるだろう。

 

豊昇龍が再出場してきた髙安に敗れて4敗。首位とは2差だが、貯金が1なので自身の勝ち越しを心配する方が先だ。とはいえ、最終的な優勝ラインは3敗以下になる公算が高い。マークは外さない方が良いだろう。