均整の取れた体つきでキレのある技を繰り出し、長年幕内で活躍した道産子力士最後の砦。
略歴
元年初場所新入幕、定着には時間がかかったが、6度目の入幕でようやく定着。最後まで二桁勝つこともなかったが、二桁負けることも珍しく、中位を主戦場に7年幕内で踏ん張った。10年5月を最後に遠ざかり、十両で2年頑張ったがついに明け渡して引退。これにより、新十両時には綺羅星のごとく居並んだ北海道出身関取が途絶えてしまった。
取り口
突き押しも繰り出せる正攻法の相撲だが、上手下手からの投げに加えて、珍手も披露している。足腰の悪い方ではなかったが、舞の海の八艘跳びを初めて受けたり、旭鷲山に外無双を食ったりと意外と負けっぷりが鮮やかだった。
引退後
実績では弟弟子の土佐ノ海に劣ったが、長年の功労が認められ師匠停年に伴って伝統ある伊勢ノ海を継承。勢、錦木と伝統ある四股名を幕内に復活させている。
伊勢ノ海部屋は、実績で飛び抜けている土佐ノ海が継ぐものと勝手に思っていたが、キャリアの長さと先代(藤ノ川)と同郷というのも効いたか、継承者に収まった。名跡の重みは健在で、令和4年からは理事を務める。
停年までまだ8年あるが、その後は誰が引き継ぐか。土佐ノ海、大碇はそれほど年齢差がないので、勢が順当だろうか。錦木も健闘しているがすでにベテラン。師匠としてもう1人、2人逸材を見出してバトンタッチしたいところだ。
筆者の印象
筆者が予想番付をつけ始めた頃、まあ良くもこれだけ幕内と十両を往復できるなあと印象に残っている。幕内と十両のレベルの違いを感じた。幕内で活躍する人は遅くても2、3度目の入幕から定着する。それを超えるとエレベーター力士として終わることが大概だが、珍しい人で6回目の入幕から7年も連続在位した。
四股名も「北勝」だが北勝海とは無関係。「鬨」の字も、よく見ると門構えでないのが新鮮だった。一字見てその人とわかる漢字の入った四股名は貴重である。全て子音の6音というのも、今以上に珍しかった。
顔立ち、体型ともに均整が取れていて、取り口も派手さはないがケレン味もなく多彩。しかし、時は百花繚乱の若貴時代。小兵に翻弄される姿の方が印象に残ってしまった。いかんせん渋い人気に留まった。
つい先週末、元関脇勢の引退相撲がようやく行われ、締めの挨拶で久々に姿を見た。頭に白いものが目立ち外見こそ老いたが、語り口もなかなかにスマートである。