四股名分析 要素の順列 時代比較 ⑥昭和45年春場所 | 三代目WEB桟敷

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少し時間が空いたが、四股名分析の時代比較の続き。

さらに遡ること11年。北玉時代の幕が明け、不死鳥・大鵬と三つ巴の争いを展開した場所。

 

 

 

 昭和45年、北玉が同時昇進となり、玉乃島は先代二所ノ関と現師匠の片男波の四股名である玉の海を継いだ(「の」がそれぞれ異なる)。同場所では、増位山も新入幕を果たし、継承力士は6人となった。なお、単なる使い回しの場合は継承には含まず、出世名として扱われていたり、同郷などの縁で一定実績のある四股名を譲られたケースに限っている。旭國は微妙だが、初代は同郷同部屋で関取にもなっているので認定。

 

 ①から始まる四股名が多いが、①-②、①-③はなく、①-④が多い。そして③に絡む地方色のある四股名は6名だけ。昭和50年代と比べて現代に近い傾向を示している。

 ②は少ない。本名は2人。本名活用は、福の字を取った出羽海部屋の福の花のみ。雑な命名で有名な先代の遺産。

 ③絡みも50年代ほど多くない。旭川出身の旭國は上記により①へ。琴櫻は地元の桜の名所に因むというが、桜では地域を象徴するとは言い難いので①ー③とはしなかった。

 ④-④には大鵬、麒麟児、龍虎、大雄と漢語が並ぶのは佐賀の花の趣味に留まらずトレンドに達したか。④-①は時代によって増減するが、この時代はそこそこいる。平成期に一時増加した時と違い、頭文字を使えないわけではない。師匠の四股名の頭を変えたのが2人、師匠の四股名や部屋の名称に若をつけたのが2人。昭和30年代には若羽黒、若前田、若葉山など、部屋の将来を担う力士の頭に若をつけるパターンが流行っていたが、その名残がある。

 

<名作>

時葉山  時津風部屋と師匠・双葉山から。「部屋+師匠」で①−①。典型的で部屋の中心力士が名乗りそうな四股名だが、意外と出世する力士は少ない。ほかに佐渡ヶ嶽部屋の琴ヶ嶽、不完全ながら双津竜や琴ヶ梅もその一種か。

麒麟児  大鵬に続けと二所ノ関の漢語シリーズ。期待の大きさが表れた存在感のありすぎる四股名。のちに後継争いの末に押尾川として分家したが、益荒雄などの名作を生み出し、博識だった先代の位牌を継ぐ者として意地を見せた。翌場所大麒麟と改めるが、僅か数年で弟弟子が継承。タイプも違うのに、よほどお気に入りの四股名だったのか。

大文字  京都出身らしい四股名。名所でも名勝でもなく、伝統行事の五山の送り火から。祭、イベント由来という斬新な出身地四股名だ。ちなみに対戦もあった嵐山は、京都とは無縁。平成中期の十文字は本名。

錦洋   井筒の誇る出世名のひとつ、10代で襲名した期待のホープだったが、君ヶ浜部屋に移ると返上して本名の川崎に、のち大峩としたが、師匠の井筒襲名前に若くして廃業してしまった。健在なら再び錦洋に戻していた可能性もある。