昭和56年夏場所終盤戦 | 三代目WEB桟敷

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3場所連続 北ー千代楽日決戦

 終盤戦も、両雄の一敗での並走は続く。北の湖は張り差しで止めて左差し狙いつつの突き押しが威力を発揮。8勝3敗で抜擢された佐田の海や両関脇も問題にせず勝ち進む。千代の富士は、対照的に危ない相撲が続いた。琴風、朝汐には二本差され、隆の里には十分の右四つ左上手を許したが、抜群の足腰と勝負勘で危機回避。外四つから体を浴びせるような掛け技は、無茶苦茶なようで成功率が高く、後の53連勝中にも逆鉾相手に繰り出している。

 斯くて両者一敗で相星のまま、今場所も楽日決戦と相成った。

 

 両者喧嘩四つ、「左差しを狙ったが、相手が外から上手を取りに来た」と北の湖。見たところ千代の富士もほぼ真っ直ぐ当たっているが、微妙に当たるラインをずらしたのだろうか。千代の富士は右差し左前ミツ、得意の形で食いついたかに見えた。しかし前ミツ引きつけて封じることはできず、北の湖の右もしっかり入って組み合う。右下手も取れた千代だが、これは捨てて腕を上げて上手を遠ざけ、左へ回るべきだったか。左上手許して、がっぷりに持ち込まれるのを嫌って右ワキに隙が生じた。僅かな隙を見逃さない北の湖、素早い左巻き替え。千代も遅れて左を巻き替えるが、画面向こうで見えないものの防がれた様子。さらに左巻き替えの攻防の中で横綱は腰を使って上手を切る。最後はモロ差しとなって勝負あり。

 

 四つ身の巧さを発揮した北の湖、左でも右でも組み止めれば体力、技術ともに上回る。ウルフフィーバー中と言えども直接対決では相変わらず分が悪い。本割では前年にうっちゃりを決めた1勝のみ。13勝で翌場所綱取りを期待されるが、越えるべき壁は余りにも高く見えた。

 

 

好調力士

 2敗で終盤を迎えた闘竜は、小結朝汐にぶつけられて後退。それでも技能賞を得た前頭筆頭蔵間を電車道で運ぶなど突き押しが炸裂し、10勝を挙げた。三賞が来なかったのは残念。3敗で付いていた佐田の海は、7枚目にも関わらず北の湖戦が組まれ、脱落。最終的には9勝止まりだったが、速攻の冴えは光った。

 

役力士

 5敗で終盤に入った隆の里、大関への足固めとして負けられない終盤だったが、糸が切れたかのように負けが込んで大関どころか平幕へ転落。琴風は9勝したが、千代の富士にモロに入って圧倒しながら逆転負けのが痛恨で、二桁には届かず。巨砲は4連敗で追い込まれたが、最後平幕に連勝で千秋楽で勝ち越し。巧さは発揮したが、先場所のように星は伸ばせなかった。

 朝汐も千代に双差しに入りながら内掛けを食ったのが響き、二桁に届かず。しかし好調の蔵間や北天佑を圧倒した突き押しの威力は最後まで衰えなかった。栃赤城は5勝止まり。いつもの腕を手繰る奇手もなかなか決まらず。お株を奪う逆とったりにきた天ノ山をとったりに返したくらい。

 潰し合いが激しく、結局誰も二桁には乗らず。大関レースは一旦スタートからやり直し。

 

平幕上位

 筆頭の蔵間が三役復帰確実。終盤は疲れも出たか一気に出られて土俵を割る相撲が目立ち二桁には届かずも技能賞を得た。2枚目の北天佑も同じく9勝で敢闘賞。上位相手にも力相撲が通用し、豪快な上手投げが決まった。

 横綱大関が少ないこともあり、平幕上位は大負け力士は少なかった。4枚目麒麟児の突っ張り健在で最後4連勝で勝越し。負け越した舛田山、天ノ山、高見山、鷲羽山も持ち味を発揮する相撲があった。舛田は連続の叩きを決める引き足、天ノ山の出足を伴ったときの突き押し、高見山は栃赤城を押しつぶし、鷲羽山は若島津にスピードで上回ってモロ差し、好調闘竜の突き押し掻い潜っての掬い投げが見事。

 

そのほか

 三役から転落した富士櫻は最後まで突き押しの威力が戻らず、絶不調の2人から白星を得たものの連続の二桁黒星となった。上位初挑戦で跳ね返された9枚目の若島津は、先々場所の勢いがなく、終盤もベテラン勢に苦戦。やや地力不足を露呈したが、何とか給金。

 ベテラン大錦、大潮は中位で勝越し。共に鋭い出足と意外なしぶとさを発揮して番人らしい働き。下位に下がった黒姫山も最後は失速も、右差しの力士のような取り口で出足の衰えをカバーし下げ止まった。しかし、これが最後の給金となる。

 絶不調力士は最後まで好転せず、終盤も全敗だった鳳凰が2勝13敗、玉ノ富士3勝12敗。再出場後連勝した荒勢もそこまでで3勝止まり。序盤に休場した高鐵山、幕尻で終盤崩れた黒瀬川と5人は陥落必至の成績。

 新入幕琴千歳は4連勝スタートの貯金を守って勝越し。突っ張りが通用したのは自信になる。