平成大相撲 一門別優勝回数 | 三代目WEB桟敷

三代目WEB桟敷

力士分析などを行う相撲研究サイト「大相撲パラサイト」のブログです。

 大相撲パラサイト「令和3年版部屋データ」を近日公開。

 作成に当たって、近年の一門ごとの勢力変遷に言及するため、平成時代のデータを改めて精査してみようと思い立った。

 とりあえず優勝回数が端的に勢力を表すだろうと、一門別の優勝回数表を作ってみた。

 

 まずは平成期の通算優勝回数を比較。

 立・伊は、立浪・伊勢ヶ濱連合、のち立浪一門、雷・伊勢ヶ濱を経て伊勢ヶ濱一門。

 貴花は、通称貴乃花グループ時代から貴乃花一門、その解散後に二所一門に再加入するまでを指す。

 無所属は、高田川部屋が高砂一門を破門になって二所一門に加わるまでと、時津風を離脱した錣山、湊が二所一門に加わるまで。

 

 1位立浪・伊勢ヶ濱61回、2位高砂53回、3位二所ノ関40回、4位出羽海21回、5位時津風6回。各順位間は大きな差がついた。

 

 白鵬43回、朝青龍25回、貴乃花22回と平成三大横綱の優勝回数そのままの順位となった。出羽海の最多は武蔵丸の12回。時津風は鶴竜の5回。

 

 

 

 

 その変遷を振り返ると、まず九重勢とハワイ勢の高砂一門がロケットスタート。元年は3人で独占、2年春まで8連覇。3年から戦国時代に入るが、曙が抜け出して再び高砂一門のリード広がった。

 6年に入って貴乃花が台頭して二子山部屋黄金時代を築き、平成10年まで二所一門の独走時代。出羽海は6年に武蔵丸がようやく一門初優勝も、その後2年に1度のペースで追い上げられない。曙頼みの高砂も同様のペースで、旭富士が引退した立浪・伊勢ヶ濱、霧島が1度優勝した時津風に至っては全く蚊帳の外だった。

 11年から12年にかけて武蔵丸率いる武蔵川軍団が6連覇。武蔵丸が活躍した11年と14年に出羽海一門が年間最多優勝を記録。12年は曙が復活して高砂と出羽海が2回で並び、13年は貴乃花が復活して二所が最多を奪回したが、その後は20年の琴欧州だけで10年余沈黙。出羽海も、18年の栃東以降は24年の把瑠都だけで10年消えた。

 15年から18年は朝青龍の独走で再び高砂の時代に。だが、白鵬が台頭した19年以降は立浪一門(名称は目まぐるしく変わるが)が10年に渡って年間最多を記録。そのうち23,25年は独占。史上最多優勝回数を大きく更新した白鵬に加え、日馬富士の9回も貢献している。

 26年に鶴竜が制して23年ぶりに賜杯が戻った時津風は、鶴竜が30年に連覇し、出羽海とタイながら初の年間最多を記録。かろうじて各一門1度は年間最多を記録(タイ含む)することになったが、唯一の一桁で5大一門の中では大劣勢だった。

 貴乃花一門および無所属は優勝力士を出せなかった。

 

 

 最後に、平成年間の通算優勝回数の推移を見てみよう。前述のとおり高砂が8場所分リードして始まったレース。

 だが、3年に平幕連続優勝でやっと芽を出した二所ノ関が、藤島・二子山軍団で席巻。5年を終えて14差があったが、猛追して9年についにトップを奪う。

 10年を終えて7差をつけたが、10年代に入ると勢いが衰え、武蔵川部屋が台頭した出羽海一門が二桁を超えてくるが、依然大差。

 次いで曙、千代大海による微増に留まっていた高砂一門が、本家に朝青龍を擁して16年に王座奪回。みるみる引き離し、22年には最大18の差をつけて独走した。

 しかしその頃には既に白鵬の天下。これを擁する立浪のち伊勢ヶ濱一門は、18年の時点では旭富士、魁皇の2人による8回で4位に甘んじていたが、21年には出羽海、24年には二所と完全に止まってしまった大派閥を抜き去った。そして白鵬が大鵬の優勝回数を破った27年。最大39の差をわずか10年弱でひっくり返し、ついに首位に躍り出た。

 その後3年余はペースダウンしたものの差は縮まらず、8差をつけての1位でゴールテープを切った。

 高砂は昭和末期からの九重黄金時代の流れで好スタートを切り、うまくバトンをつないだが朝青龍後は全くノーチャンス。役力士すらめったに出ないタレント不足に陥り、無抵抗に抜かれるのを待つだけだった。朝乃山が9年の空白を埋めたのは、令和最初の場所だった。首位に在ったのは20年とダントツ。

 稀勢の里が連覇するなど最後の数年やや持ち直した二所は、7年間首位を守ったが、後期10年超の失速が響き、2位高砂とも大差の3位。

 最初の5年唯一の0回と出遅れた出羽海は、本家筋の出羽海、春日野が最後に1回ずつ優勝したが奮わず。武蔵川勢14回に玉ノ井の栃東の3回、尾上の把瑠都1回。

 時津風は長らく井筒の霧島の1回だけで推移。昭和期に続いて弱小の汚名を雪ぐことはできなかった。最後に名門井筒の鶴竜が意地を見せた。

 

 この当たりの分析も部屋データ新年版には反映していきたい。乞うご期待。

 前年版はこちらから。