ポイント
1 関脇の東西
小結8勝VS2枚目11勝
東西ともに空くが、東2枚目11勝の霧島と、西小結8勝髙安が昇進濃厚。東西がどうなるかは微妙なところ。あまり類似例がなかったが、平成9年1月に東小結8勝の武双山が、西筆頭11勝の貴闘力を抑えて東関脇となっている。平成10年には東2枚目11勝の琴錦が小結止まりで、東小結8勝の千代大海が関脇昇進。番付がものを言っている。だが昭和に遡ると、筆頭の11勝が関脇に上がって小結8勝は据置きという2例があったから、20年以上前の例は当てにならないかもしれない。
感覚的には霧島が上な気もするが、今年2度小結負け越しながら落ちなかった髙安が、今回も番付重視の恩恵を受けて東と予想する。陥落から6年経って序列5番手の番付とは信じられないタフネスぶり。それとも上位のレベルが下がっているのか。
▶︎ハズレ。平幕で11勝の霧島が上回った。やはり20年以上前の前例は当てにならない。
2 三役最終枠
2枚目8勝vs5枚目9勝vs8枚目11勝
小結の1枠は関脇7勝の王鵬が確実。
もう1人の小結に昇進有力と言える成績の力士がいない。先場所も同様で、2枚目8勝伯桜鵬と4枚目9勝若元春を比較して前例では2枚目8勝有利と予想したところ、なんと小結で負け越した髙安が据え置き残留した。だが、さすがに5勝の隆の勝は陥落だろう。
昇進候補は、西2枚目8勝の若元春、東5枚目義ノ富士がいるが、先場所調査した前例によると、2枚目8勝が有利。
さらに東8枚目11勝の一山本もいる。8枚目以下から10勝、11勝での三役昇進はレアだが、三役常連力士が次々大関に昇進して関脇小結が流動的だった平成20年代半ばには毎年発生した。
だが当時は本当に候補がいなくて、5枚目の8勝力士も同時に昇進している。その中で5枚目9勝を抑えて昇進している例があったが、3枚目以内の勝越しを抑えてという例はなかった。
記憶に新しいのは7年夏、安青錦が9枚目で11勝して、5枚目以内に勝越し力士がいない状況も手伝って三役残り1枠に滑り込むかと思われたが、小結6勝の髙安がまさかの残留。中位からのラッキー昇進は簡単には許さないというメッセージを感じた。その時の安青錦は優勝争いに絡んで大関戦も戦っており、平幕戦ばかりだった今場所の一山本を敢えて抜擢する理由もないだろう。
先場所も昇進候補だった若元春は1横綱1大関を破っており、番付優先となるのが順当と考える。
▶︎あたり。こちらは番付上位が優先されて若元春が西小結に。一山本は東筆頭となった。
3 幕内昇進争い
どう転んでも空きは3つ 昇進相当は6人
陥落相当は幕尻近くで大敗の3人。4人目は16枚目の欧勝海だが、千秋楽筆頭で8勝の藤青雲を破って7勝目。これぞ入替戦という一番を制して残留相当の星を得たのに、理不尽な陥落はさせられない。
なのでどう転んでも3人しか昇進できないが、わんさか昇進候補がいる。朝乃山、朝白龍の当確はまず動かないので、のこり1枠。
3、4枚目で9勝の大青山、輝は今場所はないだろう。
西筆頭8勝藤青雲、東2で9勝琴栄峰、東5で11勝の羽出山。この3人の争いとなる。藤星雲は入替戦敗退という事実を考慮しなくてもやや苦しい。通常筆頭の勝越しはかなり強いが、空きが少ないと絶対ではなく、特に西は危うい。近いところでは平成30年に旭大星より西2枚目9勝碧山が優先された。令和4年には英乃海が東西6枚目の11勝に上回られて据置きを食っている。今場所の琴栄峰、羽出山より下位の同成績者の場合でも上がれていない。
となると琴栄峰と羽出山の争い。勝越数と同じ枚数だけ上がるという単純計算では羽出山だが、昇進がかかると番付優先バイアスがかかる。
平成16年11月には西2で9勝の五城楼が東5で11勝の春ノ山に上回られて昇進ならず。それ以外は類似例が見当たらない。今回琴栄峰は東だがやはり逆転するのかは分からないが、両方ともに昇進したケースでは、大方5枚目11勝の方が上の番付となっている。
琴栄峰は千秋楽17枚目の朝紅龍に幕内残留の星を与えており、勝っていれば2人とも仲良く昇進できたはず。その辺も鑑みると、羽出山が有利となる材料が多い。先場所も入幕のチャンスだったのに2枚目据置きだったじゃないか、と佐渡ケ嶽元審判長からクレームが入りそうだが、過去の経緯までは考慮するとは聞いたことがない。大変気の毒ではあるが。
▶︎あたり。最後のひと枠は羽出山。こちらは「(2枚目9勝と5枚目11勝が)両方ともに昇進したケースでは、大方5枚目11勝の方が上の番付となっている。」という例が参考になった。
4 十両昇進・陥落
令和8年からは十両昇進も予想したい。
13枚目5勝の日向丸、最下位14枚目紫雷も5勝で途中休場で、陥落確実。3枚目未勝利で休場の三田も気の毒だが落ちる成績。10枚目白鷹山も4勝では厳しいが、幕下からの昇進候補が枯渇している。
筆頭旭海雄、15枚目で全勝優勝の一意は確実。3枚目5勝の出羽ノ龍も当確。
次候補が西5枚目4勝聖白鵬だが、5枚目4勝の昇進は令和元年の豊昇龍、明瀬山以来途絶えており、当時は陥落が明らかな成績だったため。その後やたらと十両下位が陥落しにくくなったので、白鷹山が4枚降下で済む可能性が高そう。審判部長の名前を見て言っているわけではないが。
西9枚目6勝の栃武蔵もいるが、6枚目以下からの全勝以外での昇進はさらに例外的。9枚目6勝の例を引くと、特殊な事情で引き上げられた例を除けば、平成3年秋の前進山が東5枚目古賀を抑えて昇進している。ただこの頃は5枚目以内優先という申し合わせができる以前で、上記の5枚目4勝豊昇龍は、6枚目5勝美ノ海の幕下止まりを尻目に昇進している。したがって、聖白鵬を差し置いての昇進は厳しそうだ(いずれも幕下止まりなら、番付逆転はありうる)。
余談ながら、9枚目6勝で昇進した例には白鵬が名を連ねている。16年1月からの関取定員4名増の恩恵を受けた形。双葉山が春秋園事件による力士大量離脱で繰上入幕したのも有名な話だが、横綱になる人はそういう星の下に生まれているようだ。ちなみに前進山の例で、上がれなかった古賀というのはのちの大関魁皇。上述の豊昇龍の頃なら優先されていたはずだ。
▶︎あたり。白鷹山が東14枚目で残り、幕下からのラッキーな昇進は生まれなかった。
改名ラッシュ!!
伊勢ヶ濱部屋が突然の改名ラッシュ。
先場所草野が義ノ富士と改名して、宮城野ルーツとの決別を印象付けたが、今度はもっとドラスティック。8人の旧宮城野部屋出身者が、近年の伊勢ヶ濱部屋が徹底している「3音+富士」の四股名になった。象徴だった白鵬の「鵬」は一掃されたが、元幕内で白鵬の内弟子だった炎鵬だけは改名せず。
伯桜鵬→伯乃富士
郷里の英雄琴櫻、師匠白鵬と2人の横綱から取った渾身の四股名だったが、なんとも取ってつけたような四股名に。乃が漢字なのは伊勢ヶ濱部屋にしては珍しいが、字画か何かか?
聖白鵬→寿ノ富士
白鵬肝入りのモンゴル出身日本人力士、風貌も師匠を彷彿させるだけあって四股名も最も思い入れが感じられたが、跡形もなくなった。
天照鵬→三重ノ富士
こちらも誰?というくらいの改名。せめて照は現師匠の四股名だし、残して違う系統のパターンも残して良かったのではと思うが。どストレートに三重と来たか。
川副→花の富士
十両時代は輝鵬と名乗り、転落後本名に戻していたが、一転全然違う四股名に。輝(てる)ノ富士は流石に遠慮したか。花って。また特徴のない。「の」にしたのは何か意味があるのか?
先場所の義ノ富士も「義理」を大事にと四股名の由来を理由を明かして、おいおい白鵬への義理は?とツッコミたくなったが、畳み掛けるように改名ラッシュをかけてきた。合併や移籍後に改名するケースは少なくない。現師匠も十両昇進時に前師匠からもらった若三勝から、伊勢ヶ濱らしい照ノ富士に改名しているが、案外前所属への義理立てもあってか四股名で旧所属の名残を残すケースも多い。碧山はついに栃をつけなかったし、旧貴乃花部屋の力士はほぼ「貴」を維持した。
ほとぼりが覚めた頃を狙った割には露骨なアクション。旧宮城野勢の再独立を歓迎するような先代の発言はなんだったのか。その可能性がなくなったことを宣言したとも取れる。上記の例のようにセンス的にも大変微妙で、余計に見せしめ感、踏み絵感を与える。かつて安治川部屋から伊勢ヶ濱部屋に変わった時に、「安」のついた力士を一斉に改名させたことがあったが、その際も結構雑だった。安馬とセットで入門した「安虎」は「虎の山」。幕内で名の通っていた安馬と安美錦は例外で、安馬は大関昇進時に日馬富士と改名したが、燻っていたら「馬の山」にされていたかもしれない。
一時の飽和状態は相次ぐ引退で緩和され、単純にワンチームになることを示したかったのかもしれないが、もうちょっと世間の目を気にしてはどうかと思う。ひとり四股名を維持した炎鵬の気概だけが救いに感じられた。