はっつあん 大家さん、ついに新横綱が誕生したねえ
大家 大の里だね 入門の時から、近い将来間違いなく横綱に駆け上がるだろうと思わせる力士だった。それにしても初土俵から13場所で横綱というスピードはすごい。
はっつあん 夏場所の相撲を時々見てきたけど、とにかく強いね。
大家 ほんとだ。大学卒業力士が横綱になるのは、1973年の輪島以来だ。大卒力士はなかなか横綱にはなれないというジンクスみたいなものがあったけど、これを突破した、新たな歴史をつくったことはまちがいない。
はっつあん 相撲界のエリートがなんで横綱になれないんだ、やっぱり大卒力士はダメだなと、中卒の自分なんか思っていたけど、ようやくだね。
大家 これで相撲界は、朝青龍と並んで二人横綱となった。今回の大の里の横綱昇進を一番よろこんでいるのは相撲協会じゃないか。
はっつあん どうしてですかい?大家さんは以前から、複数横綱が欲しいと言ってたじゃないですか。
大家 10月にロンドンで久しぶりの海外公演が予定されているじゃろ。
はっつあん なんでも1991年以来34年ぶりの公演ということで話題になってたね。重いお相撲さんがわんさとワンサと乗ったんじゃ、飛行機が飛び立てないんじゃないかと心配してますけど。
大家 ワハハ。ま、たぶん大丈夫じゃろ。それはともかく、日本の伝統文化といいながら、主役の横綱がモンゴル出身の力士だけじゃ格好がつかん、協会としては日本出身の力士がどうしても欲しかったんじゃないか。
はっつあん そうか。日本の相撲界では最近、各国の青年が活躍している。それもかっこいい、最近は相撲が面白いと自分なんか思っていたけどね。
大家 そうだな。
はっつあん 大の里は恵まれた大きな体なのに、動きも敏捷だ。夏場所千秋楽に先輩横綱の朝青龍に負けちゃったけど、あれだってこれからの発奮材料にしていくはずだ。ますますおもしろくなりますね。
大家 他の力士も黙ってはいないだろう。大関琴桜だってこのままではないだろうし、次の大関候補もたくさん出てきている。大の里もうかうかできないはずだ。
はっつあん ただ、大家さん、大の里ではちょっと引っかかることもあるんだよ。
大家 飲酒問題か?
はっつあん そうそう。大の里が十両の時だけど、幕下以下の力士に酒を強要して、師匠の二所ノ関親方(元横綱稀勢の里)ともども厳重注意を受けたでしょう。ずいぶんえげつないこともやってきたみたいだし。幕内では勝つと懸賞金がつく。大金が毎日入ってくれば、酒なんかに注ぎこんじゃうんだろうな、なんて心配したりして。缶ビールを1本、2本ちびちびやってる自分たちとは違うというのはわかってるけど…。
大家 懸賞金も毎回数十万円、百万円を超えるからね。横綱になれば入ってくるお金もけたが違ってくる。一方で師匠も、力士が上位にくると、遠慮して私生活に口を出さなくなる。周囲の人たち、先輩の適切なアドバイスがますます重要になってくると思うね。
この際、大卒で初めて横綱になった輪島をはじめ、多くの横綱の生きざまを一度じっくり探ってみたらどうだろう。そこからしっかり学ぶ。横綱にあこがれている子どもたち、全国各地で懸命に応援している人たちがたくさんいる。そういう人たちを励ます責任が、横綱にはあると思うんだが、どうだろう。
はっつあん そうなってこそ唯一無二の横綱っていえるかもしれねえな。