元横綱白鵬退職のニュースは、自分にとっても衝撃的でした。
この間、週間誌などで〝白鵬退職か〟とたびたび報じられてきたので、報道自体にそれほど驚いたわけではない。
しかし相撲協会の正式発表(2日)、本人も〝外から相撲にかかわっていく〟とコメントを出したと聞いて、これは事実なんだと、しばし言葉を失いました。
優勝45回をはじめ、これからの力士が追いつけそうもない大記録を次々と打ち立ててきた大横綱。その経験や努力の足跡を生かしていく道はないものか。そう考えていたときに、指導者の道をバッサリ断ち、断たれてしまった。
長年相撲を見てきた身にとっても、残念としか言いようがない。
白鵬の相撲、体調を部屋で長年管理してきたトレーナーが2013年の暮れ、『白鵬のメンタル』という本を出版しました。その出版会見に同席した白鵬は、元横綱双葉山が、戦前、戦中の厳しい時代に69連勝という大記録を打ち立て、引退後も相撲界発展のために尽力してきた、その生きざまを調べて、本を書きたいといった言葉が、忘れられません。
それだけに、引退間際のあの荒れた相撲と大きな落差も感じてきました。
白鵬の退職で、貴乃花、曙、朝青龍など相撲界に大きな旋風を巻き起こしてきた横綱の半数以上が、相撲界を去ったことになります。小さな相撲部屋で工夫を重ね、死に物狂いの努力の末に、相撲界の頂点に立った白鵬。その努力や工夫、苦しみ、経験が、全く蓄積されないことになる。相撲界にとっても大損失です、これは。
大の里が横綱昇進の時にも書きましたが、なぜこうしたことが続くのか、相撲界はきちんと分析し、考えるべきです。
チケット完売が続くからと言ってほったらかしにしていたら、それこそ日本の伝統文化の基盤が崩れてしまいます。
執行部の危機感があまり伝わってこないので、あえて一言。