かつて住んでいた地域に、自動車メーカーの土台をつくってきた方が住んでおられました。
朝の散歩で顔を合わせると、夫人と一緒にゆっくり歩いていたその方は「おはようございます」と、にこやかに挨拶を交わしてくれました。
自動車工場を立ち上げ、日本を代表するメーカーの一つに育ててきた本田宗一郎氏でした。
立志伝中の人物ですが、苦労しながら個性的な車づくりに挑戦し続け、小さな町工場を一大メーカーに育ててきた人とはとても思えない、穏やかな方でした。
自分は車が好きで、各メーカーの車(いずれも大衆車ばかりですが…)を乗り継いできました。車にかけた本田氏の熱い気持ちを知ってからは、もっぱらホンダ車ばかりです(ミーハー丸出しです…)。
今回明らかになったホンダを含む大手自動車など5社の「型式指定をめぐる認証不正」事件を聞いて、本田氏はどんな気持ちだったでしょうか。
技術開発に並々ならぬ情熱を傾けてきた本田氏にすれば…。
やめます。亡くなった人の気持ちを勝手に推測しても意味ないですから。
それにしても、国の担当者もずいぶん甘く見られたものです。
いまや〝世界のトヨタ〟として、世界の自動車産業を引っ張るトヨタ自動車をはじめマツダ、ヤマハ発動機、ホンダ、スズキがそろいもそろって、車の大量生産に必要な「型式指定」で国の決まり、規則を無視していた。
つるんでいたとしか思えませんよ。
にもかかわらず国の担当者は、まったく知らなかったのですか。
事件が発覚すると「いやあ、試験では国の基準より厳しい条件でやっていたんですよ」とか「乗り続けても安全性には全く問題ありません」と居直るメーカーもあります。
腹の中では〝現場も知らない国の役人が何を言ってるのか〟と、たかをくくっていたのではないですか。
〝いざとなれば日ごろからお世話しているセンセイたちが力を貸してくれるだろう。自分たちは国の経済を引っ張る最重要産業だ〟というおごった気持ちはなかったですか。
こうした不正をなくすことはできないか。問われたトヨタの豊田章男会長は「撲滅はできない。無理だろう」と居直っています。
いずれにしても、国の役人は、規則ををきちんと守っていたかどうかという確認さえやらず、メーカーの説明を受け入れていたわけです。やりきれません。
車はいまや、私たちの生活や仕事に欠かせない移動、運搬手段です。その安全性を守らせるなど超初歩的なことじゃないですか。
大上段に言いますが、〝国民のために働く(奉仕する)〟のが公務員の役割ですよ。
その気概を、いま発揮するのかどうか。担当部署の公務員は試されているのではないですか。
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