翔猿(とびざる)が9日目も、得意の足技を繰り出した。
相手は重く、しぶとい志摩ノ海。これまでの対戦成績でも5勝2敗と、翔猿はどちらかというと苦手にしてきた。
しかし今場所好調の翔猿に迷いはない。立ち合い思い切ってあたって、突き、押しと果敢な攻め。志摩ノ海は低い体勢でなんとしても潜らせまいと押し返す。
我慢していた翔猿は、相手が踏み込んできたとみるや、右足で志摩ノ海の右足をグイッと蹴返し(けかえし)て、土俵に這わせた。
志摩ノ海はこの動きを重々警戒していたと思う。相手は引いてくるか、足が飛んでくるかと、目まぐるしく考えていたはずだ。それでもしのげなかった。
前日の琴恵光戦に続いて、2日連続の蹴返しだ。
本人が言うように、今場所は体の動きがいい。その反映か、ここまでの決まり手は日替わりだ。「引き落とし」「寄り切り」「とったり」「すくい投げ」「下手投げ」「蹴返し」2回。
対戦相手からすれば、どんな動き、技が飛び出してくるかわからず、何ともやりにくい相手だ。
昔から相撲の基本技の大本は、押しと言われている。押しの中に寄り、突き、つりがあり、上手投げや足技、引き落としなどはその応用技だという。
相撲部屋で稽古を見ていても、指導者は「まわしに手をかけるな」「押せ、前へ出ろ」と、口酸っぱく言う。稽古場で、投げ技の稽古に専念している力士を見たことがない。
押しや寄りが相撲の基本というのは、名横綱、名力士と言われてきた人の相撲や決まり技を見ても納得できる。
それでも、どんな技を繰り出してくるのかわからない相手では、作戦の立てようもない。惑わされる。
〝何でもやる〟翔猿は面白い存在になってきた。優勝争いにかかわってきそうな予感もする。