水田に描かれた「田んぼアート」を見たいと、猛暑のなか、埼玉県行田市(ぎょうだし)に出かけました。
面積約2万8000平方㍍の広大な田んぼに描かれた作品を、すぐそばの、高さ50㍍の展望室から眺めることができます。
初めて見ましたが、その迫力に圧倒されました。
稲を植え付け、いまもすくすく成長しているとは信じがたい、ち密な絵柄です。
4種類の稲を用いているそうですが、どうやったらこんなデザインの田んぼが生まれるのか。
芸術センスゼロの自分の理解を超える出来栄えでした。
訪れた人たちは食いいるように見つめ、「すごい!」「これって、本物の稲?」という驚きと感嘆の声が上がっていました。
世界最大の田んぼアート作品として、ギネス世界記録に認定されたそうですが、当然かもしれません。
有名な絵画をはじめすごい芸術作品が、世界には無数にあります。今ではそれらの作品が各国から搬入され、日本でも鑑賞することができます。
ただ、現に目の前で日々成長している生(なま)の作品というのは、なかなかありません。
〝歴史ある芸術性の高い作品と、田んぼに作ったものを比べるなよ〟と言われそうです。
そうかもしれません。
でも、600人もの人がボランティアとして植え付けに参加し、日々成長しているという芸術作品は、世界広しと言えども、あまりないんじゃないですか。
田んぼアートの歴史はまだ浅い。1993年に青森県田舎舘村で、村おこしの一つとして始まったのが最初で、その後、各地にも広がり始めているそうです。
日本では、とにかく超高層ビルを、とばかりに、鉄とコンクリートの街づくりがいまも大手を振っています。できあがった建物の中に、目の玉が飛び出るような高額な絵画が配置されて話題にもなったりします。
これに比べると、田んぼアートの寿命は、せいぜい数カ月。
でもたくさんの人が植え付けに参加し、日々成長していく。由緒ある高額絵画とは違った、すばらしい芸術作品の一つであることは間違いない、と思いました。
行田の作品は10月中旬には刈り取られ、最後は食糧として備蓄され、人びとのおなかに収まっていくそうです。
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