横綱照ノ富士(てるのふじ)とともに、3人の平幕力士が終盤の優勝争いを盛り上げました。今場所はひょっとして彼らにも優勝の可能性?と見ていましたが、14日目、残念ながら遠藤(えんどう)、阿武咲(おうのしょう)が敗れて後退。その中で西前頭10枚目の妙義龍(みょうぎりゅう)が大関正代(しょうだい)を破って3敗を守り、可能性を残しました。
妙義龍の相撲は見事でした。
低く鋭くふみこんで、さっと左から正代の前まわしを取り、右からもおっつけて一気の寄り。目の覚めるような速攻の相撲に、大関はなにもできませんでした。
千秋楽には新関脇明生(めいせい)と対戦します。照ノ富士が結びの一番で勝てばそれまでですが、可能性は残されています。
相撲巧者ながら、年齢は34歳、誰もがピークを越えたと見てきました。
この期に及んで「(優勝争いなど)特に考えていない」といった13日目の対戦後のコメントは正直な気持ちでしょう。
激しい優勝争いに絡んでくれば、どんな力士でも高ぶる気持ちを抑えきれなくなってきますが、妙義龍はまるで他人事。普段から大口をたたく力士ではありませんが、巡ってきた優勝争いを楽しんでいるようにも見えました。
ただ、内心は少し(いや、かなり)違うかもしれません。独走と思われてきた横綱にピッタリ追走し、最後まで争ってきたのです。
優勝賞金1千万円。力士をめざした以上、幕内最高優勝という、何ものにも代えがたい最高の栄誉。それを手にするかどうか。現役最後の機会かもしれません。
「自分の相撲に集中して、いい相撲を取れるよう頑張る」という千秋楽の相撲を、ぜひ見せてください。