少々不利に見えても、じわじわと攻めて局面を変えてしまう。志摩ノ海(しまのうみ)=31歳、西前頭9枚目=の相撲は、対戦する力士にとっては決して侮れません。
12日目、剣翔(つるぎしょう)相手に低く当たって、左から出し投げで崩して下から寄り立てました。前日は若手のホープ、琴ノ若(ことのわか)を粘りの相撲で破っています。
しっかり両手をつく、きれいな仕切り。変化などの奇襲作戦は一切なし。張り手で相手の出鼻をくじくような立ち合いとも無縁で、どこまでも正攻法です。
しかし立ち上がると攻めは厳しい。低い角度からじりじり攻め、押し込まれても簡単にはあきらめません。3月場所には、関脇の照ノ富士(てるのふじ)=当時=の攻めを粘って粘ってしのぎ、土俵際で逆転の突き落としで破り、大きなどよめきが起こりました。
志摩ノ海もけがで苦しみました。幕下4枚目で関取目前だった2013年の7月場所に「左膝前十字靱帯(じんたい)断裂」の大けが。計6場所の休場を余儀なくされ、序ノ口まで転落。今でもけがは完治したわけではなく、テーピングをまいて土俵に上がっています。
一見地味ですが、勝負を終わった後の風貌からは、苦労、努力を積み重ねてきた風格が伝わってきます
白鵬(はくほう)、照ノ富士の優勝争いが熱を帯びるなか、下位力士の熱いたたかいも見ごたえがあります。