ZERO POINT | totoporuto 4thのブログ

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お話や、お絵かきをしています。

診療所を閉めて、漸く食卓に向かい腰を下ろした時に電話が鳴った。

T さん。

奥様の声。

「夫の命が尽きそうです。」

なんとも独断的な、しかも冷静だ。

解りました、すぐに伺います。

T さんは、ここの所毎年4回の診察を受けに来ていた。

年相応の状態で、

治療をするかどうかの境界線上に推移していた。

尽きるってどうしたのだろう。

物静かに、寝室へ案内する奥様。

T さんは、ベッドに静かに横たわっていた。

どうしました?

「有り難うございます、私はもうすぐ死にます。よろしくお願いします。」

確かに臨終間際と知れた。

少し頑張りませんか?

「いえ。私は死にます。それはとても幸せなことなのです。それを先生に見届けていただきたく、

無理を申しました。」

今の状況が、理解できません。

「そうですね。自然です。自然は不可解なものです。」

医療にかかわってきた僕にはその言葉が冷たく刺さった。

「その自然が私を、今解放してくれるのです。幸せも、至極というものです。」

解放。

それは僕にはなかなか納得できるのもではない。

多くの臨終を見届けてきた僕には、何か凝りだした拘りがあった。

まもなくT さんの臓器は機能を停止し始めた。

すぅーっと水分が重力に馴染んでゆくのが感じられた。

死は、こんなにも絶対的なものだったのだ。

そして解放。

この瞬間、僕はゼロポイントを知った。

T さんはゼロポイントになったのだ。

そして僕も、

僕こそ、今、ゼロポイントにリセットされたのだ。

リセット。

生命に、終わりはないんだろう。

 

ゼロポイントに無限の宇宙を!