落語聴きに行ってないと増えるのが音楽ネタだ。日記というよりもヘタなコラム集みたいになってきたなあ(汗)。ということで本日の音楽ネタは宇崎竜童「ハッシャバイ・シーガル」を。


なに大丈夫よ

なに大丈夫よ
宇崎竜童 / ハッシャバイ・シーガル (’82 EPIC シングル TATTOOありB面)


79年に実際にあった三菱銀行人質事件をモデルにしたATG映画「TATTOO(刺青)あり」エンディングテーマ。映画は、監督:高橋伴明、プロデューサー:井筒和幸(!)、出演:宇崎竜童、関根恵子、渡辺美佐子ほかによる。


実際の事件は凶悪極まりないもので、高橋伴明監督は自分の商業映画第1作目の題材にこの事件を選んだ。そして犯人を主人公にして事件までの生き様をドライに、そしてハードに描き切った。主人公でマザコンの犯人竹田に宇崎竜童、その愛人に関根恵子、息子を溺愛する駄目な母親に渡辺美佐子がそれぞれ扮した。


公開して間も無くテレビで観たのが最初だった。確かこの映画で主演2作目だったと思う宇崎竜童が凄かった。もちろん高橋監督の容赦ない執拗な演出も素晴らしかったが、このときの宇崎氏には何かがきっと降りていたに違いない。共に堕ちてゆく関根恵子もまさに迫真の演技だったし、駄目な母親、渡辺美佐子の息子への愛情も凄まじかった。「気」や「熱」や、その他様々なものが想像以上な混ざり方をして結実したピカレスク・ロマンの名作だと思う。



抜け殻になったように座る渡辺美佐子のラストシーンにかかるこの歌を聴いて静かに震えた。



ハッシャバイ・シーガル

作詞 阿木耀子  作曲 宇崎竜童



淋しさを癒すのに 俺は何をすればいい

潮風の町に来て 飛び立つかもめ見つめている


そんなに何を 生き急ぐのか

ハッシャバイ ハッシャバイ シーガル

同じさ俺と 阿呆鳥さ

ハッシャバイ ハッシャバイ シーガル


眠りたいぐっすりと 蒼い海の底深く

みじめさを通り越し 安らぎの場所探す俺さ


堕ちてく夢は もう見たくない

ハッシャバイ ハッシャバイ シーガル

放浪(さすらう)だけの 阿呆鳥さ

ハッシャバイ ハッシャバイ シーガル


そんなに何を 生き急ぐのか

ハッシャバイ ハッシャバイ シーガル

同じさ俺と 阿呆鳥さ

ハッシャバイ ハッシャバイ シーガル




射殺される主人公を演じた宇崎氏本人が歌うロッカバラード。生きるのがとことん下手で身を滅ぼすしかなかった主人公自身が歌ってるようにも聞こえるからこそか、物凄い説得力で持ってこの歌が迫ってきた。エンドロールと共に歌が流れているその間じゅう、主人公の心の闇に同化してしまったような気持ちになり、とにかくひたすら哀しかったのを覚えている。


凶悪犯に同情などするつもりはない。が、この映画と歌で描かれている、人として生きて行く哀しみや駄目な男の淋しさは、やはり人ごとではなく非常に共感するところがある。男のこういう気持ちを、どうして女性の阿木耀子氏はこんなにジャストに書けるんだろう。天才にも程がある。


いろんなことで堕ちてるときはこの曲をよく聴いたもんだ。誰か自分以外の人がそんな駄目な俺の気持ちを理解してくれてるような、聴いてるとそんな気になって、結果癒されてたんだなあと思う。聴いて酔って涙腺が緩くなったこと多数。これからもずっと聴き続けてゆく名曲中の名曲で、俺にとってはとっておきの薬だ。


おやすみ、かもめ。


なに大丈夫よ

宇崎竜童 / BLOSSOM-35th Ryudo Uzaki Best Songs Collection

Amazon.co.jp

シングル Ver. を収録しています。