旧友再会と久々の谷根千効果であるのか、今日はちょい文芸的なことを書きたい気分だった。支離滅裂な順序であれこれ書いちゃったなあ。


余勢を駆って本日最後の一本はユーミン「ランチタイムが終わる頃」にする。ブログに歌詞をリライトし、歌詞でなく詩として読み返してみるとなんだか新鮮で気持ちいいことに気づいたのだ。たたそれだけのことなんだけどね。




ランチタイムが終わる頃



会えるはずのないあなたの姿も

見つけられそうに混んだレストラン

みじめなうわさが届かないように

気の早い半袖で来てみた


手紙も出せぬほど忙しいのよ

話しかけられて微笑みかえす


ほら チャイムを鳴らし

コーヒー冷まし

もうすぐランチタイムが終わる


日向で語らう人々は急ぎ

また白いビルに吸い込まれる

私と鳩だけ舗道に残って

葉裏のそよぎをながめていた


かすかに響いて来る地下鉄に乗り

はやびけをしたい そんな午後です


ほら チャイムを鳴らし

背中をたたき

もうすぐランチタイムが終わる


チャイムを鳴らし

背中をたたき

もうすぐランチタイムが終わる




なに大丈夫よ
松任谷由実 / PEARL PIERCE ('82 TOCT-10646


都会のOLをテーマに制作された’82年リリースの13枚目「PEARL PIERCE」の3曲目。初夏の日比谷公園を舞台にした、不倫(?)の果ての切なさを歌った名曲。リライトしてみてシンプルな構成と少ない言葉数にあらためて気づく。主に状況描写だけなのにこの切なさ加減は凄いな。導入からのピアノとハープ(かな?)のアンニュイなアレンジなくしてはこの曲は完成しなかっただろう。それくらい作品のムードを決定することに成功している。この時期の正隆氏のアレンジ力は神がかっている。


アルバムリリース時のまだ若かった頃の自分は、話を逸らすため気の早い半袖を着て出勤する女性心理とか容易にはわからなかった。ただ食事を終え再び各自がそれぞれの会社に戻るところ主人公と鳩だけが居残り、初夏の風が街路樹の葉を揺らすシーンだけは鮮烈にイメージされた。葉裏のそよぎとは、何てきれいな言葉なんだろうとか思った。響いて来る地下鉄は千代田線か日比谷線か。


初夏の晴れた東京のど真ん中、規則的な人々の流れの中でそこだけ違う動きをしているかのようなコントラストが切なくも美しい。余談だが作家吉田修一氏の小説、「パークライフ」はこの曲にインスパイアされて産まれたのだろうな。


「PEARL PIERCE」、アルバムのADはなんと太田和彦氏。居酒屋探訪家としても有名なあの太田氏である。淡いグリーンの抽象的な空間にモニターだけがあって楽譜が舞っているデザイン。ジャケ写は富永民生氏。ブックレットの涼しげなイラストは安西水丸氏。夏の都会のOLをテーマにしたアルバムコンセプトを、非常にクールで都会的なイメージにまとめ上げている。プロたちによるパーフェクトな仕事だと思った。


どうせ仕事で忙殺され夏休みもないだろう今夏の一服の清涼剤として、今年もまたこのアルバムを聴くだろう。



また夏が来る。