19日は夕方からあいにくの雨。仕事終りで本日は「白酒ひとり」。

桃月庵白酒定例独演会「白酒ひとり」も今回で17回目。

今年、一月のにぎわい座「白酒独演」から数えてこれでちょうど40本目の落語会。俺、暇なのかな。

豆や

化け物使い

- 仲入り -

船徳


「白酒ひとり」、毎回いいのだけれど、今回は特によかったような気がする。非常に落ち着いていたし、とにかく噺が端正だった。


客入れのときのBGMはポールバターフィールドブルースバンドだったらしい。当初デクスターゴードンにしようと思ってたらしいが。洒落てます。お手伝いの前座さんはさん喬一門のさん市さん。この人、落語のために生まれてきたんじゃないかと思えるくらい、動きがすでに噺家ぽいんだな。あの若さで凄いことだ。ほんとにさん喬門下は侮れない。彼は伸びるな、きっと。


開演。マクラについてはここでは書けない(笑)。白酒師、毒吐くと止まらなくなっちゃうんだろうな。客席は爆笑の渦。そんなときの白酒師の「あ~言っちゃったな・・」という苦笑いの顔がどうにも好きだ。客に対する過剰なまでのサービス精神の成せる技なんだと思う。それでもレッドゾーンのマクラをうまく噺に繋げてゆくのはさすがだ。


中入りまでの前半はまさに落語が落とし噺であることを実感するような根多だった。

「豆や」はひっぱってひっぱって最後に下げるような噺。

故志ん朝師匠でも有名な「化け物使い」も爆笑するような感じではなかったのだがすんごくよかった。

爆笑するぞと期待していたお客さんは前半物足りなかったかもしれないな。大爆笑のマクラだったし。でも笑わせにいこういこうとしない師匠の話っぷりにこちらは呑まれっぱなし。まだまだ落語の深遠さをよくわかってない俺なんかでも、その一端をちょっと垣間見れた前半であった。


一転して後半の「船徳」。客の爆笑で会場が揺れる。この二年くらい師の落語を観つづけてきたが、出色の出来だったなあ。「替わり目」「抜け雀」「転宅」「花見の仇討」など、師には名演が多いのだが、本日これに「船徳」が加わった。

もう全編これ白酒ばなし。各キャラの立たせ方、カメラ位置、物の質量に至るまで師によってすべてが計算され白酒師らしく実現できていた。チャライ若旦那がカッコつけて捻り鉢巻を巻く仕草で会場は爆発。もやった舟の竿を張るところでは若旦那がオカッパ頭で紺色のバミューダショーツと白ソックス履いてるのが見えたぞ(笑)。そう、画が見えるのだ。今日は風も吹いたな。もはや映画だったのだ。


今日のお客さんはみな同じ感覚だったんじゃないだろうか。会場全体がひとつになった瞬間が確かにあった。落語会であまり体験したことのない出来事だったなあ。


残念ながら故志ん朝師匠の高座を観たことはない。残された音源などで当時の雰囲気を知るに留まっているのだが、今日の白酒師は志ん朝師匠のように見えた。白酒師はきっと志ん朝みたいになるんだろうな。


昨今、柳家一門の活躍が目立つが古今亭一門には白酒ありと感じた高座であった。いや~白酒師、ホントに凄いところまで来てるなあ。。