ブログを作るにあたり、やってみたかったことがあった。 集めてきたレコードの整理と紹介めいたことだ。


最近は高くなりとんと買わなくなってしまったが、10年以上に渡りアシッドフォークとかサイケデリックフォークと呼ばれる類のレコードをコツコツ買い続けてきた。主に70年代の自主制作のフォークレコード。入口は日本のバンド、渚にてだった。あんな感じの音を探していたら辿りついたジャンルだったのだ。


国内外に多くのファンがいるこのジャンルについて、国内にも既に素晴らしいサイトがいくつかある。どのサイトもここらへんの音を非常にうまい言葉で文章化できていて感心してしまう。私の記事はそれには遠く及ばない駄ブログであるのだが、なんとか頑張って触れてみたいと思う。


アシッドフォーク関連の記事、記念すべき一回目は Virgin Insanity というバンドのことについて書こうと思う。


なに大丈夫よ-Virgin Insanity 3
VIRGIN INSANITY / Illusion of the Maintenance Man (US '71 Funky 72411-1)


当初コレクターの人から入手したCD-Rの中に今回の Virgin Insanity はあった。まるでカセットで録音したようなモコモコしたくぐもった音。ヘロヘロな演奏。シンプルに淡々と進行するアコースティック作品ではあるが、これまで聴いてきたフォークと何かが決定的に違っていた。単にへたなだけといえばそうなんだろうけど、個人的には大いにツボだった。


繰り返し聴くにつれ、その音楽は自分の中でどんどん変化していった。楽しげに聴こえるときもあれば、哀しげに聴こえてみたり。歌い手の気持ちに同調できたかと思えたら、突き放された印象になってみたり。素晴らしい体験だったように思う。ちょっとオーバーだけど。レコードラストの曲、「Time of Sorrows Gone Soon」 は特に震えた。少し音程のはずれた女性コーラスをバックに感極まったのか、がなってしまう男性Vo.。真摯ともとれるその音楽への向かい方に感動を覚えた。ちょっと泣けた。


以来、どうしても欲しくてできる限りの手を尽くしてみたものの全く出てこないレコードだった。なんでも71年のテキサスで200枚くらいしかプレスされてないらしい。出てくるわけないよな。一度、国内のディーラーから45万で売約済のそれを見せてもらったことがある(にしても高すぎ)。オリジナルに邂逅したのは2006年までその一度きりだった。


聞いた話によると、最近惜しくも解散してしまったゆらゆら帝国のプロデューサーでもあった石原氏がアメリカのレコードマーケットでカントリーの箱から発見したのが世に知られる発端とか。ジャケ見て何かピンとくるもがあったらしい。このときの発見がなかったら我々の耳には届いてないわけで、感謝せずにはいられない。


そして2005年。同じような音楽の趣味をもつ方とネットを通じて知り合ったことで事態は急変した。彼は Virgin Insanity リーダーBob氏の娘さんのブログを発見しており、現連絡先を知っていたのだ。凄い話だ。それからその方の多大な尽力もあり、紆余曲折一年の時間をかけて Virgin Insanity はこの日本でCD化された。その際、お蔵入りしていた幻の2ndの音源やらデモトラックも出てきて、大量のボーナストラックとBob氏の新作を加え、それも無事リリースに漕ぎ着けたのだった。


連絡をとってくれた方とは以来連絡を欠いたままなのだがこの場を借りてもう一度お礼を言いたい。同時期、値ははったもののようやくオリジナルも入手できた。重なるときは重なるものである。再発にあたりテキサスで今も元気に暮らしているだろうBob氏が喜んでくれたのが何より嬉しかった。いろいろあったけどBob氏に協力できてよかったと思う。


多くのリスナーに聴かれるまで35年を要した Virgin Insanity。入手まで8年かかった我が家のレコードは、まだたまにプレイヤーにのせられて歌っている。